このように、官邸からのクレームを恐れ、視聴者を裏切る行為に手を染めるNHKの姿勢を見れば、菅首相に当然の質問をおこなっただけの有馬キャスターをNHKが降板させたのも、当然の流れだったのだろう。
しかも、今後もNHKはさらにこうした視聴者や制作現場を無視した“政治的介入”を許していくことになるのは必至だ。
というのも、NHKの人事案が本日、参院本会議で立憲民主党など野党3党が反対するなか与党などの賛成多数で可決・承認されたが、この人事案は、かんぽ生命保険の不正販売を追及した『クローズアップ現代+』に不当抗議した旧知の日本郵政副社長(元総務事務次官)に丸乗りし、NHK経営委員会で「(番組の)作り方に問題がある」「(日本郵政側が)納得していないのは取材の内容」などと発言していたことがわかっている森下俊三委員長(当時は委員長代行)を経営委員として再任させるというものなのだ。
森下委員長のこの行為は、経営委員による個別の番組への干渉を禁じた放送法に違反するという指摘がなされてきたが、その上、経営委員会はいまだに森下氏による番組介入発言が飛び出した際の議事録を全面開示しておらず、公開されているのは議論を要約した文書。これには第三者機関である「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が「公開制度の対象となる機関自らが対象文書に手を加えることは制度上予定されていないことであり、それは対象文書の改ざんというそしりを受けかねない危険をはらむ」と指摘している。
報道の自主自律の原則を守るでもなく、不正を追及する現場を守るでもなく、ましてや視聴者の知る権利を守るものでもなく、むしろ文書の改ざんに隠蔽、放送法違反の番組への直接介入といった安倍・菅政権そっくりの不正をおこなう。いかにNHK上層部が腐りきっているかという話だが、森下氏の経営委員の再任問題を考えても、こうした傾向は今後も酷くなっていくことになるだろう。
安倍政権時には「安倍さまのNHK」と揶揄されたNHKだが、そのとき以上のスピードで「菅さまのNHK」化は進行しているのである。
(編集部)
最終更新:2021.02.10 10:11