西浦教授は「コミュニケーションは難しい」と言葉を選びながらも、「兵庫県との往来だけをピンポイントに止めても流行制御に直結しないことは皆さんすぐに分かりますよね」などと、呆れ果てたように語っている。
本サイトは、吉村知事への再反論で、その言い訳の矛盾を逐一指摘し、この往来自粛が吉村知事・松井市長の読解力のなさからはじまった暴走であったことに加え、水面下での感染拡大と早すぎた自粛解除の動きをごまかすために、関係が悪かった兵庫県を意図的にスケープゴートにした可能性が高いと指摘したが、西浦教授も言外にそれを匂わせていると言っていいだろう。
しかも、西浦教授はこの著書のなかで、吉村知事らがその後やったことについて非常に鋭い分析をしている。
吉村知事らは、最初の緊急事態宣言が解除された後、「(接触8割削減を打ち出した)西浦モデルだけを信じて突き進むのは違うんじゃないか。大阪と兵庫の往来自粛をしたときも、西浦先生の数字で、兵庫と大阪は2週間後に感染者が3千人になる、とありましたが、事実としてそうはならなかった」などと自分の誤読、あるいは政治判断を棚に上げて批判し、「国を挙げて批判的検証をしないと間違った方向に進むんじゃないか」と西浦教授の攻撃に乗り出した。しかも、そこで吉村知事が飛びついたのは、「K値」だった。
感染症の専門家でもなんでもない学者が出してきた「K値」がその後、感染予測を大外ししたことはいまさら説明するまでもないが、西浦教授はこうした吉村知事らからの攻撃について、こう表現しているのだ。
〈自粛に後ろ向きな大阪の政治家は、緊急事態宣言後の経済的ダメージの話をそらすためにも、僕をターゲットにして宣言が本当に必要だったのか、かなり執拗に(でもチープな質で)責め立ててくることになります。〉
自分の誤りをけっして認めず、それどころか自分への批判を封じ込めるために“仮想敵”をつくり出し、「執拗かつチープ」な攻撃を繰り出す。まさしく、これこそが吉村知事の実態なのだ。
非を認められない未熟さにとどまらず、我が身可愛さから批判をかわすことを目的として政策を決定するような人物に、大阪府民が命を預けているという恐怖。しかも、その実態をメディアが報じないがために、いまだに「さすが吉村さん」などと持ち上げられている現実……。メディアはその責任を重く受け止めるべきだ。
(編集部)
最終更新:2021.01.13 02:51