実際、菅首相は緊急事態宣言の再発出が遅くなった理由について、とんでもないことを口にしていた。記者会見のあとに生出演した4日放送『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)で、「年末年始において陽性者数が少なくなるだろうと専門家を含め考えたのも事実」と発言したのである。
あれだけ感染者数が急拡大していたというのに「年末年始に陽性者数が減ると考えていた」って、この国の首相は本当に正気なのか。しかも、そんな専門家がどこにいたというのか。もしいたとすれば、それは年末の検査数の減少によって陽性者数も減るという意味であって、当然ながらそれは感染が落ち着いたことをまったく意味しない。そんなことはいまどき小学生でもわかる話だ。
しかし、菅首相はそれがまるでわかっていなかったらしい。というのも、ジャーナリスト・立岩陽一郎氏のラジオ番組『子守康範・立岩陽一郎のもっと言わせて!』(MBSラジオ)に、12月27日に菅首相と面会した田原総一朗氏が出演した際、菅首相が緊急事態宣言の再発出について語った内容をこう明かしたというからだ。
「菅さんは、『実は田原さん、これはオフレコだけど、分科会の尾身会長が、その必要はない、と言っている』と。『医療業界は、新年になれば感染者数が減ると考える』と」(日刊ゲンダイ6日付・立岩氏のコラムより)
「医療業界は、新年になれば感染者数が減ると考える」だと……!? 言っておくが、昨年12月18日に東京都病院協会は〈現在、東京都では医療崩壊直前です〉という緊急メッセージを発表し〈緊急事態宣言やロックダウンに匹敵する極めて強力な対応を行うことが不可欠〉と訴えていた。さらに、12月21日には日本医師会などの9団体が記者会見を開き、このままでは通常の医療を提供できなくなるとして「医療緊急事態宣言」をおこなっていた。何の対策も打たれていない状況で「新年になれば感染者数が減る」などという予測をするような医療業界って、そんなものがこの世に実在するのか。
さらに、尾身会長の発言も同様だ。たしかに尾身会長は12月21日の会見でも「現時点では緊急事態宣言を出すような状況にはないと思う」と述べていたが、「いまの状況が続けば医療がさらに逼迫するのは明らか」とも語っていた。尾身会長が緊急事態宣言の発出に消極的だった理由について、立岩氏は〈その理由は、「いま2度目の緊急事態宣言を出しても、あのときのような協力が得られる確証は今のところありません」というものだ〉とコラムに綴っているが、菅首相は自分にとって都合の良い意味として受け取っていたのだ。
この菅首相の認識は、はっきり言って「楽観的」などと表現できるレベルを超えている。読解力が著しく低いのか、はたまた自分の信じたいことしか耳に入らず、見たいものしか見えないのか。
一方、“菅首相の代弁者”へと転身を果たした田崎史郎氏は昨日のワイドショーで、“政府は年末年始、検査件数が減るから感染者数が減ると思っていた”といった旨の解説をしていた。つまり、見かけが減るから緊急事態宣言を求める国民の声が弱まると踏んでいたということになるが、これまた事実なら、その場しのぎもいいところだろう。