本サイトの読者ならばよくご存じだと思うが、百地氏といえば日本会議のイデオローグであり、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幹事長を務めるなど、安倍政権下での憲法改正実現のため先頭に立ってきた安倍政権の御用学者。憲法学者という以前に「極右運動家」と表現すべき人物だ。
そのことを象徴する出来事も起こっている。安保法制の国会審議がおこなわれていた2015年、衆院憲法審査会で自民党と公明党、次世代の党の推薦で参考人として呼ばれた長谷部恭男・早稲田大大学院教授をはじめ参考人の学者全員が安保法制を「憲法9条違反」と明言した際、当時の菅官房長官は「まったく違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と反論。しかし、その後、菅官房長官が名前を挙げた憲法学者はたったの3人しかおらず、そのうちのひとりが百地氏だったのだ。そして、このとき菅官房長官が挙げた3人は全員が日本会議や神社本庁と深い関係にあるウルトラタカ派改憲団体「民間憲法臨調」に属し、百地氏は同団体の事務局長だった。
そんな百地氏を、NHKは「憲法が専門の百地章・国士舘大学特任教授は、6人が任命されなかったことについて『任命拒否はありうる』として次のように指摘しました」などというナレーションで紹介し、「政府対応に理解示す意見も」とテロップをつけ、百地氏のこんな主張を垂れ流したのだ。
「首相の任命権というのはですね、学術会議の推薦に拘束されるものじゃありませんから、ある程度の自由裁量はあります。裁量権を行使してですね、そして全体の構成、バランス、政治的中立性等を配慮して、あのような拒否をしたということで、私は妥当だと思っております」
「首相の任命権は学術会議の推薦に拘束されるものではない」って、そんなことを示す法律や法的解釈はどこにあるというのだろう。実際、10月8日におこなわれた参院内閣委員会の閉会中審査では、日本共産党の田村智子議員が「『推薦された者を任命拒否することはあり得る』という日本学術会議法の法解釈を示す文書はあるんですか?」という質問に対し、木村陽一・内閣法制局第1部長は「明瞭に記載したものというのは、私が知るかぎり見当たりません」と答弁をおこなっている。つまり、百地氏が「拒否は妥当」と言える根拠が存在しないことは、内閣法制局すら認めているのである。