PCR検査をおこなったタイミングは起床時、ポビドンヨードを含むうがい薬でうがいをする前だったというが、前述したようにポビドンヨードを使ったうがい薬の殺菌作用によって口腔内のウイルスが一時的に減少し、単純に陽性率が減っただけという可能性も考えられる。そもそも、今回発表された結果は被験者がわずか41人にすぎず、それだけで効果を認めるというのはあまりにも早計だ。
実際、吉村知事による「うがい薬でコロナに打ち勝てる!」宣言にネット上はざわつき、次々にツッコミが寄せられた。
〈え??イソジン等のポビドンヨード含嗽薬(うがい薬)を使ったら唾液中のウイルスが減るのは当然では????体内での増殖には意味ないでしょ??〉
〈ヨード系のうがい薬(イソジン)は水うがいに比べて風邪への予防効果が劣り、うがいしないのとほぼ同じ、というRCTが京都大学から報告されているのは、プライマリケアや保健管理の領域では有名な話です。〉
〈イソジンなどのヨード系のうがい薬は、常在菌まで殺菌してしまうので、口腔内やのどの粘膜を傷つけ、感染に弱くなるといわれてる。妊婦や幼児にはヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能障害の危険もある。〉
〈コロナにイソジンが効果的と、吉村市長が会見していましたが、甲状腺疾患、妊娠中の方は注意が必要です!!!!〉
さらに、医師からもツッコミが入った。たとえば、新型コロナの診療もおこなっているナビタスクリニック理事長の久住英二医師は〈そりゃ消毒薬の成分だからウイルスは減るよね。だけど、うがいするまでにはウイルスは細胞内に入り込んでいるから、感染を予防したり重症化を阻止する効果は無いでしょう〉とツイートしている。
だが、問題なのは、吉村知事の会見を鵜呑みにした人びとがすでに続出していることだ。ツイートにもあったように、ポビドンヨードを使ったうがい薬は妊婦や甲状腺に異常のある人などには注意が必要だが、吉村知事の会見後、ドラッグストアの棚からイソジンなどのうがい薬があっという間に消えるという現象が発生。買い占めも起こり、さらにメルカリなどでは高額転売する者が現れた。その上、ポビドンヨードを含んだうがい薬は第三類医薬品で出品が禁止されているためか、出品されているものの多くがポビドンヨードを含まないうがい薬という有様となっている。
効果自体がかなり眉唾だというのに、よりにもよって知事がお墨付きを与え、府民のみならず日本中に大混乱を引き起こす──。あまりにも無茶苦茶すぎるだろう。