しかも、注目しなければならないのは、この安倍政権の私兵として動いてきた中村・警察庁官房長が警視庁刑事部長の後に、警察庁組織犯罪対策本部長を1年間勤めている事実だ。
今回、沢尻エリカを逮捕したのは厚労省の麻取ではなく、警視庁組織犯罪対策5課。警察庁と警視庁の違いはあるが、中村官房長のかつての管轄で、強い影響力を行使できる部署なのである。
そして、安倍首相秘書の事件で中村氏の命を受けて動いた釣宏志捜査一課長も今年の2月まで、その組対5課の上司に当たる警視庁組織犯罪対策部参事官(副部長的な役職)の職にあった。つまり、沢尻を逮捕したのは、中村人脈のコントロール下にある部署なのだ。
だとしたら、中村氏が政権を忖度してまたぞろ動いた可能性だってあるのではないか。「桜を見る会」をめぐる安倍政権の苦境を目の当たりにして、中村氏が影響下にある組対幹部に「何かマスコミが飛びつきそうなヤマはないか」と尋ねる。そして、沢尻エリカを捜査していることを聞き出し、あの首相秘書の息子が被害者だった事件と同じように、組対幹部に「なるべく早く逮捕しろ」と指示し、組対幹部が現場に「一週間で逮捕しろ」と命じる──。彼らの来歴と現在のポジションを考えれば、この推測はけっして荒唐無稽な妄想とは言い切れないだろう。
さらに、疑念を濃厚にするのが、ほかでもない沢尻エリカ逮捕の不可解な経緯だ。
「薬物事件の捜査では、現物を容疑者が所持・保管している現場を確実に抑えることが最も重要ですが、政局に合わせて都合良く逮捕などできないからです」
「現代ビジネス」が「沢尻エリカ逮捕は安倍政権の陰謀」という主張があり得ない理由」(松岡久蔵氏)という記事で、薬物事件を長年取材してきたという週刊誌記者のこんなコメントを紹介し、ラサールらの推論を「陰謀論」と断じている。
上から目線でラサールらを陰謀論と攻撃しているツイッターなどを見ても、同様の「薬物捜査はガチガチに証拠を固めないと逮捕できない、素人は黙ってろ」などとしたり顔で解説しているものが多い。
しかし、沢尻の実際の逮捕は、「現物を容疑者が所持・保管した現場を確実に押さえた」というような「綿密な捜査」からはほど遠い、杜撰きわまりないものだった。