「長年の慣行」を何度も繰り返して、ようやく「反省」……。しかし、とても反省しているようには思えない。というのも、自分の地元支持者を大量に招いていたというのに、こんな言い訳をはじめたからだ。
「そういう(叙勲を受けた人)方々だけではなくて、市井の方々もですね、なるべく多く来られる、なかなか私自身、そう接触する機会がありませんから、そういう意味においても、いままでおそらく推薦をですね、与党にも出していたんだろう、こういうふうに思います。そういう市井の方々のなかにもですね、それぞれ地域でがんばっておられる方々たくさんいますから。じゃあどういうふうに選ぶんだってなかなか難しいところがあると思います。そういうなかでいままでこういう方法がとられてきたんだろうと、こう思いますね」
大量に招待した安倍首相の後援会関係者を「市井のがんばっている方々」って──。こんなことを言い出したら、安倍首相の地元の支持者や自民党議員の後援会関係者以外にも「がんばってる市井のみなさん」はいくらでもいる。なぜ安倍首相の地元の支持者や自民党議員の後援会関係者の「がんばってる市井のみなさん」だけが招待されるのか。
しかし、もっとひどかったのは、公選法・政治資金規正法違反疑惑が持ち上がっている「桜を見る会」前日夜におこなわれていた「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」に絡んだ安倍首相の主張だ。
安倍首相は「さまざまな報道がございましたので、事務所からですね、詳細について、きょう報告を受けました」と前置きし、こう述べた。
「夕食会(前夜祭)の価格設定が安すぎるのではないかという指摘がございます。ま、そういう報道もありますが、参加者1人5000円という会費については、まさに、大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格であるとの報告を受けております」
この発言については昨晩配信した記事でも指摘したが、そんな話があるわけがない。一体、どこのホテルが何も要求しないのにわざわざ最低金額の半分以下に設定してくれるというのか。だいたい本サイトが昨日ニューオータニに問い合わせた際も担当者ははっきりと「最低でも1万1000円」と回答していたし、宿泊などによるサービスもないとも言っていた。また、ニューオータニはNHKの取材に対しても「値切り交渉などには応じられない」と答えているのだ。
だが、安倍首相はこうも重ねて強調した。
「たとえば毎年使っているとかですね、どれぐらいの規模であるとか、あるいは宿泊をしておられるのか、そういうことを総合的に勘案して値段を決められるといかれるということなんだろうと思います」
「もちろんホテルとしては、ほかのホテルとの競合もありますし、お客さまとの関係もございますから、そこのところはですね、いま私が申し上げたかたちで決めておられると、いうことを私のほうから申し上げますが、まあホテル側はいろんなことを勘案して決められているんだろうなぁと思います」
ようするに、「ホテルが決めたことだから自分とは関係ない」と責任を押し付けたわけだが、しかし、たとえば一般客には値引きに応じられないと言っているのにホテル側が安倍首相にだけ「宿泊客が大半だから半額以下に」「毎年使ってくれるから」などと大幅な値引きをしていた場合でも問題がある。仮に6000円の差額を850人分も値引きを受けていたならば合計で510万円になるが、政治家が高額の値引きを受けていた場合、それは政治献金にあたる可能性があるからだ。刑事責任に問われなくても、総理大臣という立場によって高額の値引きを受け、それによって有権者を買収していたのだから、道義的責任は免れない。