まったくその通りとしか言いようがないだろう。本サイトでも指摘してきたように、「表現の自由」は国から補助金をもらっているかどうかとはまったく関係なく保障されるべきものだ。「国から金をもらっているのだから国の言うことを聞かねばならない」という論理がまかり通れば、表現文化が死滅するのはもちろん、最終的には「生活保護を受けているんだから政府批判するな」という論理にまで発展しかねない。
だが、この「表現の自由」を踏みにじる発言を平気でしているのが、いま、安倍政権のまわりにいる政治家たちだ。和田政宗らネトウヨ議員や松井一郎大阪市長はもちろん、政府首脳である菅義偉官房長官も2日の会見で「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べて展示物を確認して補助金交付の是非を検討すると発言。柴山昌彦文科相も同日「事業の目的と照らし合わせて確認すべき点が見受けられる」などと牽制した。メディアも同様だ。産経新聞は〈公金を使ったイベントとして公平性に欠ける不適切な内容〉〈公的な芸術祭の運営には、公益に配慮した冷静さが必要〉などと批判していた。
こんな暴論が飛び出すなかで、大村知事ははっきりと「公権力を持ったところであるからこそ、表現の自由は保障されなければならない」「税金でやるからこそ、憲法21条はきっちり守られなければならない」と語ったのだ。
その上で、再び河村市長の“圧力”行為に対し、大村知事は畳みかけるように厳しく批判をおこなった。
「この文書ね、河村さんから来た文書……河村さん、得意気になって、いろんなところで、胸を張ってこの発言をテレビのカメラの前で言われていますけどもね、河村さんが実行委員会の会長代行なんですね。市長で、市の代表です。“市の負担金2億円を含むこういう税金を使われるんだ”と、“だからこの内容については、この内容はここまでならいいけどこれ以上はいけない”と書いてあるんですね、これ。で、中止しろと書いてあるんですね。これはですね、河村さんはまさに市長さんで、予算を出すまさに権力者、公権力を行使される方ですね。こういう公権力を持った方が“この内容は良い、この内容は悪い”と言うのは、憲法21条の言う検閲と取られても仕方がないんじゃないでしょうか。検閲には事前だけではなく事後検閲もありますからね。これ(文書)はまさに『止めろ』と言っているんだから、そういうことになるんじゃないですか?」
「憲法21条に照らして、(河村市長の文書の内容は)いかがでしょうか? みなさん、どうお考えになりますか? 私は非常にですね、疑問があります。憲法21条違反の疑いが非常に濃厚ではないかというふうに思います。一私人が言うのとは違うんですよね。そのことはもっと自覚されたほうがよかったんではないかと思います。これ、裁判されたら直ちに負けますよ、完璧に」
さらに、大村知事は日本維新の会の姿勢にも言及。河村市長に対して松井一郎代表が「どうなっているんだ」と電話をかけたことや、吉村洋文・大阪府知事も大村知事を非難して〈「知事辞職勧告決議」じゃないか?〉などとツイートしていたことなどを挙げ、中止を求める要望書についても「維新の会というのは憲法で保障された表現の自由を認めない方々なのか、と。憲法21条をまったく理解していないのかと思わざるを得ない」と強く抗議したのだった。