しかし、今回の党首討論で、こうした卑劣さ以上に問題なのは、安倍首相が年金問題とまともに向き合わず、じつは政府の共通認識だった「ほとんどの国民が老後、年金が不足する」という事実をなかったことにし、年金問題の解決を放棄していることだろう。
言っておくが、今回、野党は安倍政権の責任を糾弾しただけではない。安倍応援団の「対案がない」という攻撃を意識してか、年金制度の危機と向き合うことが重要だとして、解決策もきちんと提案していた。
ところが、安倍首相はまったくとりあわず、いつもの「民主党政権では〜」と民主党ディスをまじえながら、年金給付をどんどん減らせる「マクロ経済スライド」を続行する方針を強弁したのだ。
だが、それも当然だ。金融庁「老後2000万円」報告書への批判が高まって以降の「報告書をなかったことにする」政府のゴマカシ姿勢じたい、安倍首相がつくり出したものだったからだ。
19日の朝日新聞によると、年金問題の追及を受けた10日の参院決算委員会がおこなわれたその日、安倍首相は激怒。周辺に対してこんな言葉を吐いていたという。
「金融庁は大バカ者だな。こんなことを書いて」
そして、安倍首相の激怒によって首相官邸が動き、菅義偉官房長官が司令塔となって11日午前に金融庁と財務省に連絡。「報告書を受け取らない」という指示をしたというのだ。