さらにひどかったのが、共産党の志位和夫委員長の質問のときだった。志位委員長は、年収約1000万円を超えると保険料が増えない仕組みが問題だと指摘。マクロ経済スライドをやめて富裕層の保険料増額で「減らない年金」にすることを提案した。
ところが、安倍首相は、いきなりこう切り出したのだ。
「この議論でですね、たいへん残念なのは、先程の党首の議論でですね、年金の、いわば積立金が枯渇すると言ったとき、拍手が起こったことであります。私は、そういう議論はですね、そういう議論は、すべき、ではないですし」
志位委員長が質問しているのに、それには答えず、その前の玉木代表の質問のことを語り始めた安倍首相。しかも、その中身は完全なデマだった。
安倍首相の言う「積立金が枯渇すると言ったとき」とは、玉木代表が2017年の全要素生産性では、政府のシミュレーションでも「36年後に積立金が枯渇する」と指摘したことを指すと思われる。つまり、安倍首相はそのときに野党席から「拍手」が起きたとして、「年金積立金が枯渇することを喜ぶなんて、政府を批判したいだけという証明だ、なんと卑しい」と印象付けようとしたらしい。
本当に拍手が起きたとしても、枯渇を喜ぶような意味でないことは明らかだが、もっと唖然としたのは、そもそも野党席から拍手なんて起きていなかったことだ。
国会中継を見直すと、玉木代表が「いま総理がやるべきなのは、国民に、どういう年金の姿になっているのかを、正直に語る政治を実現することじゃないですか」などと語ったときに拍手が起きていたが、「積立金の枯渇」について言及したときは、何回中継を見返しても、小さなどよめきが起きただけで、拍手の音は聞こえてこなかった。
ようするに、安倍首相は、起きてもない拍手をでっちあげて、野党に対して印象操作をおこない、年金制度追及をごまかそうとしたのだ。
卑劣というか、これではデマで野党を攻撃しているネトウヨサイト以下と言ってもいいだろう。もし安倍首相が「嘘」という自覚がないとしたら、自分の都合のいいように事実をねじ曲げるサイコパスと言うしかない。