久米は、大手マスコミでは五輪タブーと電通タブーで完全に封殺されている、招致時の賄賂問題、そして、大手広告代理店やゼネコンの利権の問題にまで触れたのである。
内容だけではない、その物言いも過激そのものだった。たとえば、五輪のマスコットキャラクターを選ぶ小学生の投票の取りまとめをした教員の「五輪委員会が投票活動や五輪についての授業の仕方の学習指導案をHPにあげていて驚きました。子どもたちの心を五輪洗脳するかのごとくです。学校の子どもたちの思いを投票に込めてネット投票して結果が出てしばらく、森喜朗の名前が書いてある感謝状が送られてきました」というメールが読み上げられると、久米はこうコメントした。
「その感謝状は目が腐りますから、火で焼いて処分したほうがよろしいかと思います」
また、番組は少ないながらも届いた賛成派、久米批判の意見を紹介していたが、久米はそうした意見にもまったく怯まず、逐一反論していた。たとえば「マイナス面だけあげつらってプラス面を言わないのはなぜでしょうか。無責任に聞こえます」という意見には、「僕はプラス面言ってます。儲かるんですよ、ゼネコンが。広告代理店もめちゃくちゃ儲かります、大プラスです」と皮肉交じりに返したほどだった。
この久米の振る舞いは、あえてのものだろう。五輪をめぐって語られがちな「いい話」を過激に否定し、あらゆる賛成意見に徹底的に反対することで、五輪賛成一色に染まる世論や反対意見を封じる空気に抗い続けるという、強い意志をはっきり示そうとしたのだ。
実際、あるリスナーから「私は最後の2人になっても反対します」というメールが紹介されると、久米はこうコメントした。
「最後の2人ってわかりますか。もうひとりは僕です」
最後のひとりになっても五輪に反対し続けると、あらためて意思を鮮明にしたのだ。