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自衛隊の隠蔽はイラク日報だけじゃない! 南スーダンでは「宿営地に25発の弾頭、弾痕9か所」の被害を隠蔽

 この1、2年で相次いで発覚した公文書の隠蔽問題。しかし、実はこうした事態は、あの安保法制をめぐっても起きていた。

 ジャーナリストの青木理氏が、近著『情報隠蔽国家』(河出書房新社)のなかで、現役自衛官へのインタビューなどを元にその隠蔽の内幕を詳述している。

 それは、安倍政権が安保関連法案を強行した2015年夏、国会で飛び出した“日米密約”の記録文書をめぐるものだ。同年9月2日の参院特別委で共産党の仁比聡平議員が暴露したこの防衛省の内部文書は、河野克俊統合幕僚長が2014年12月の衆院選直後に訪米した際、米陸軍のオディエルノ参謀総長に対してこう説明していたと記されていた。

〈オディエルノ「現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?」
 河野「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」〉

 つまり、日本の行政府や立法府による決定よりもはるかに前に、日米軍部間で安保法制の成立が決められていたことを意味していた。ただでさえ憲法違反の法案において、政府がこの民主主義を無視した“密約”を認めれば大混乱は不可避だったが、文書を突きつけられた安倍首相は「仁比委員が示された資料と同一のものの存在は確認できなかった」(安倍首相)と強弁。そして、最終的に安保法制は強行採決に持ち込まれ、可決されてしまった。

 ところが、実はこのとき防衛省内では、安倍首相が「存在しない」と言い張った文書の「流出犯」探しが必死で行われていたのだ。さらには、国会で文書の存在が飛び出した直後に、防衛省はこの文書を秘密対象にしてしまったというのである。

 これは、文書漏洩の「犯人」と決めつけられた防衛省情報本部の三等陸佐・大貫修平氏が、青木氏のインタビューに実名で応じ、証言したものだ。大貫氏は警務隊(自衛隊内の司法警察)による過酷な聴取のうえ、送検されたが、嫌疑不十分で不起訴になった。また、昨年3月には「身に覚えのない内部文書の漏えいを疑われ省内で違法な捜査を受けた」として国に慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を起こしている。

 昔でいえば“情報将校”の役職にある大貫氏は、仕事の性質上、さまざまな機密文書も扱う立場だった。例の“日米密約”の会談記録もメールでやり取りしていたという。その大貫氏が青木氏によるインタビューのなかで語ったところによれば、実に「国会で質問された翌日、上層部の指示で文書が『省秘』に指定された」というのだ。

「省秘」というのは、自衛隊員の秘密保持義務を定めた自衛隊法59条等に基づくもので、大貫氏によれば「漏らせば懲役刑を科せられます」という。実は、この文書は当初、取扱注意という意味合いしかない「取扱厳重注意」というカテゴリーだったのだが、青木氏も〈つまり問題の文書は9月3日に行われた「省秘」指定作業によって初めて防衛省・自衛隊としての「正式な秘密」に格上げされたことになる〉と記しているように、国会で暴露されたのをきっかけに、突然、秘密文書の扱いに変えられたわけである。

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