というか、そもそもの話だが、彼ら極右界隈が羽生選手を持ち上げて「日本の誇り」だのと“日本スゴイ言説”をがなり立て、日の丸掲揚という復古的ナショナリズムそのものの運動に繋げていること自体、かなり無理があるとしか言いようがないだろう。
羽生くんはスゴイ!→羽生くんは日本人!→だから日本人はスゴイ!みたいなバカ丸出しの思考回路だけを指摘しているのではない。右派のやり方を見てうんざりするのは、さらに、羽生くんはスゴイ!→日の丸を振りましょう!という極めて理解しがたいことを得意げに喧伝しているからだ。
言うまでもないが、羽生選手の金メダルは、個人の才能と努力はもちろんのこと、カナダ人であるブライアン・オーサーコーチをはじめ、カナダ人の振付師、アメリカ人のデザイナーによる衣装、チームメイトもスペイン人、ベトナム人の両親のもとに生まれたカナダ人、韓国人など、実に日本人に限らないさまざまなルーツをもつ人たちに支えられてのものだ。それを「日本スゴイ」に利用しようというのは端的に言って卑しい。
しかも、羽生選手自身が会見でパレードについて問われて、「やっぱりパレードするにはたくさんの費用がかかって、そしてどれだけ特別な支援があってのことかということは非常にわかっています」としたうえで、「ちょっとでも仙台の復興に、宮城の復興に携われたらいいなと思っています」と述べている。つまり、あくまでパレードは復興のためと考えていて「日本の誇り」などではなく、費用の問題も理解しているのである。実行委員会が金をかけて日の丸を配布することなど、羽生選手の本意ではないだろう。
本サイトでも以前報じたように、羽生選手をめぐっては、今回の右派による「日の丸手旗」運動への利用にかぎらず、極右界隈から政治利用されてきた。たとえば、羽生選手は2012年3月4日に開催された「東日本大震災復興祈念の集い」なるイベントに出席しているが、その実態は日本会議が仕切る極右思想の啓蒙イベントだった(過去記事参照)。
しかし恐ろしいのは、おそらく22日のパレードで、羽生選手に向かって日の丸をふる多数の参加者がメディアに映し出されることで、スポーツ選手の個性や考え方などおかまいなしに、こうしたグロテスクな光景が当たり前のようになってしまうことだ。是非とも羽生選手には、「日本国旗を振るよりも先に、復興に協力してください」ぐらい言ってもらいたいものだが……。
(編集部)
最終更新:2018.04.21 02:16