しかし、この段階ではまだ、他の出演者から冷ややかな視線を受ける程度で、非難されるところまではいっていなかった。
決定的になったのは、この後、春蝶の例のツイートが紹介されたときだった。
〈僕は20歳から10年間、家賃2万円台のアパートで住んだ。それでも金がなくて、家賃を滞納したりした。当時は仕事が本当になかったから。ほとんど毎日がチキンラーメンかコーンフレークやった。それでも生きれた。芸人風情でも何とかやっていける日本は素晴らしい。これ以上この国に何を望みますか?〉
このツイートは炎上後、春蝶が言い訳として投稿したもので、本サイトでも芸人の下積みと国民の貧困をいっしょくたにするトンデモだと批判したが、『バイキング』では、春蝶と同業の芸人たちから一斉に疑問の声が上がったのだ。
たとえば、フットボールアワー後藤輝基はモニターに映し出されたツイートを見て、こう指摘した。
「僕だって貧乏な生活しましたけど、これは有志なんですよ。自分でやろう思うてやってるんですよ。これと国の話は僕は違うと思うんですよ」
また、横澤夏子は「夢を追っかけている方の貧困って貧困じゃないような気がするんで。なんか、だから、調べられてるのはわかるんですけど、本当にわかっているのかなって」と、なんとも辛辣なダメだしを口にした。
彼らの言う通りだろう。いま、この国で問題になっている貧困というのは、非正規雇用のせいでまじめに働いてもその日一日を食いつないでいくのが精いっぱいなワーキングプアや親の貧困によってまともに教育も受けられないこどもの増加、社会福祉切り捨ての結果、病人や高齢者が次々に貧困に転落し、自殺するしかないくらい追い込まれている状況のことを指すのだ。「売れることを夢みている芸人のビンボー生活」とはまったく話の次元が違う。