「(自民党は獲得議席が)260台に乗ればいいなと思っていたのが、昨日の午前中ですよ。でもやっぱり自民党の組織力っていうのはすごくて、あの、昨日も電話作戦やってたんですよ。それは安倍総裁と二階幹事長の指示で、『とにかく電話しろ』と。ギリギリまで。候補者名を言うと、これ選挙違反ですから『自民党の○○事務所です』と。『投票に行かれましたか?』と」(『グッディ!』での発言)
組織力云々以前に、こんなことが許されるのか。無論、この話を聞いていた司会の安藤優子氏はすかさず「○○事務所ということは、候補者の名前は言うわけですよね?」と質問したが、田崎氏は「でも、事務所というかたちですから」と回答。しかし、田崎氏と並んで解説をおこなっていた政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏は「はっきり言えば脱法行為ですけどね」とツッコミを入れていた。
投票日に安倍首相自ら「脱法行為」である電話作戦の指揮を執る──。資金力と組織力をバックに、安倍自民党は投票日でもなりふり構わず選挙戦をおこなっていたわけだが、それは自民党だけの話ではなかった。安倍政権応援メディアとその団員たちが、選挙期間中にも安倍首相を“アシスト”するべく暗躍していたからだ。
たとえば、投票日を迎えた22日の産経新聞朝刊一面は、思わず仰け反るような紙面構成をおこなった。「安倍政権5年 審判は」という見出しの下に大きく掲載した写真は、新宿南口駅前で凄まじい数の人びとに囲まれ、その声援に応えるように手を上に掲げる男性ふたり。写真キャプションは投票日ということもあり、政党名は隠されて〈最終日、「最後の訴え」に聞き入る聴衆ら。レインコート姿の人も〉としか書かれていない。
「安倍政権」と打たれた見出しと写真を合わせて見ると、一見、安倍自民党の街頭演説の風景のように錯覚してしまうが、じつはこの写真、21日におこなわれた立憲民主党の街宣の写真。大勢の聴衆に囲まれている男性ふたりは背を向けているため顔は見えないが、これは枝野幸男代表と福山哲郎幹事長だ。
つまり産経新聞は、立憲民主党の盛り上がりを、あたかも「安倍政権への審判」であるかのようにミスリードする紙面を、党名を隠して掲載できる投票日であることを利用して掲載したのだ。
安倍自民党はこの街宣がおこなわれた同じ夜、秋葉原駅前で、多くの日の丸に包まれるという「極右集会」「おとなの塚本幼稚園」というべき、安倍支持者の実態が露わになった街宣をおこなった。現場では、TBSやテレ朝などに「偏向報道だ!」とわめき、政権に批判の声をあげる人に対しては「朝鮮人か!」などと怒鳴り散らすというヘイトスピーチまで飛び出す始末だったが、常日頃、同様の主張を繰り広げている産経新聞はこうした「風景」こそ「真実」として紙面化すればいいこと。それを、こんなときには立憲民主党の写真を利用するとは、まったく開いた口も塞がらない。