昨晩、『報道ステーション』(テレビ朝日)の党首討論に参加した安倍首相は、今回の事故についてもコメント。「米側に原因の徹底究明と再発の防止を申し入れるように指示した」と淡々と述べた。
「再発防止」という、米軍による事故が起こると繰り返される空疎な言葉。昨年12月に墜落した、あのときに約束した「再発防止」ができていないからまた事故は起こったというのに、まるで他人事なコメントである。
だが、ここで富川悠太キャスターが、当然の追及をおこなった。北部訓練場の半分を返還する引き換えに高江にヘリパッドがつくられた経緯があることを指摘した上で、“安倍首相は「沖縄の負担軽減」と言うが、民家の近くでこうした事故が起こったことを考えれば、ほんとうに負担を軽減したと考えられるのか?”と質問したのだ。
すると、安倍首相は「沖縄に米軍基地が集中している現状はそのまま維持してはいけないと思っている」と言ったあと、こんなことを言い出した。
「ですが、安倍政権発足後、北部訓練場を返還してもらいました。これは沖縄が返還されてからは最大の基地の返還であります」
富川キャスターは、その北部訓練場一部返還の交換条件によってヘリパッドが集落を取り囲むようにつくられたことを「負担軽減」といえるのかと尋ねたのに、安倍首相は躊躇うことなく「安倍政権の功績」だとアピールしはじめたのだ。事故が起こった当日に、である。
そこに人が暮らし、生活を営んでいる。その上を、爆音を立てて米軍機が飛び交う。そうした異常な日常のなかで、今回の事故は起こった。にもかかわらず、いかにも選挙期間中であることを意識し、質問を無視して「安倍政権アピール」をはじめる──。高江のヘリパッド建設工事に反対する市民を暴力的に「排除」してきたことからもそれは明確だったが、今回、よりはっきりした。安倍首相は、沖縄の生活者を「命ある人間」だと認識していない。そうでなければ、このようなむごい回答ができるだろうか。