茂木事務所の関係者が「手帖の主な配布対象である後援会の役員とは、自民党員でも何でもない自治会長などがやっていることが多い」と話しているように、手帖を配布された人々は党員でもなければ後援会費も払っていない「非後援会員」という“不特定多数”ということになるだろう。そもそも、手帖を〈政治活動用資料〉と主張することも相当無理がある。
ここで思い出すのが、自身の選挙区でうちわを無料配布し、同じように公選法が禁じる「寄附」行為ではないかと疑惑がもち上がり、結果、法相を辞任した松島みどり議員の例だろう。あのとき、松島法相はうちわを「うちわではない」「討議資料だ」と言い張ったが、その後、特捜部はうちわが有価物であり、公選法上の寄附にあたると認定している。しかも、松島法相のうちわの単価は1本当たり36~45円で、制作費はトータルで約150万円。一方、茂木経済再生相が180万円相当を複数年にわたって配布していたとなれば、松島議員よりも悪質となる。
さらに言えば、茂木経済再生相は「茂木の名前や写真の入ったものではない」というが、手帖を受け取った人は「秘書が名刺を携えて自宅まで持ってきた」と話している。他方、小野寺五典防衛相は、選挙区内で有権者に自分の名前が入った線香セット(計50数万円相当)を配ったことが発覚し公選法違反で書類送検、2000年にはこの問題で議員辞職に追い込まれている。
過去の例から考えても、大臣辞職、議員辞職に相当すると思われる茂木経済再生相の公選法違反疑惑。しかし、今回の「週刊新潮」の記事では、もうひとつ気になる情報が明かされていた。それは、茂木経済再生相による「報道潰し」問題だ。
記事によると、同誌の第一報の後、茂木経済再生相が「大手メディアの幹部」にこんな連絡をしていたというのだ。
「総務省のお墨付きがあるから、何の問題もない。だから新潮に乗っかると誤報になっちゃうよ」
もしこれが事実であればなんとも姑息な話だが、実際に毎日新聞や地元・下野新聞、テレビ朝日などは茂木経済再生相の言い分ばかりを垂れ流していた、と「週刊新潮」は指摘している。
公選法違反疑惑は無論、報道を潰そうとメディアに直接接触する人物が「人づくり改革」を謳うとは笑うに笑えない。だが、茂木経済再生相に対しては、別のかたちでも“大臣失格”の声があがっている。