そんななか、8月2日には極右政党「日本のこころ」に所属する吉田康一郎・元東京都議が、〈TBSひるおびは本当に酷い。再春館製薬所はスポンサーを降りたとの事〉とツイート。なお、この吉田康一郎氏は在特会の集会での講演経験もあるガチガチのネトウヨ政治家である。
これに、有象無象のネトウヨや前述のまとめサイト、バイラルメディアが即反応。〈再春館製薬は視聴者からのクレームでスポンサーを降りた〉この調子で皆がどんどん覚醒して偏向メディアに鉄槌が下るといいですね〉〈ドモホルンリンクル買わなきゃ!〉などと、“自分たちの攻撃でスポンサー撤退、偏向番組に勝利”というふうに解して沸き立った、というわけである。
ところがこの話、なんともトホホというか、実に頭の悪いネトウヨらしいオチがついた。
というのも、このネトウヨの“勝利宣言”を見て参戦してきた産経新聞が、ウェブ版「産経ニュース」6日付で「再春館製薬所がTBS系『ひるおび!』のスポンサーを降りた!ネット民歓喜するも… リスト出回り、電凸呼びかけも」なるタイトルの記事をぶったのだが、実のところ、再春館製薬が『ひるおび!』のスポンサーを降板したのは今年の3月であることが判明。つまり、文科省の内部文書や前川喜平・前文科事務次官の実名告発などが出る数カ月も前の話だったのだ。
しかも、ネトウヨのなかで『ひるおび!』バッシングの別の大義名分となっている「“小池百合子都知事による自民党会派への挨拶時、川井重勇都議が握手を拒否した”と虚偽の報道をした」というやつも、放送があったのは7月初旬(その後、番組は訂正して謝罪)のことで、再春館製薬のスポンサー降板とまったく関係なかった。
ようするに、ネトウヨたちの期待とは裏腹に、「再春館製薬所は『ひるおび!』が加計問題で偏向報道を繰り返したから降りた」というのは時系列的にありないのだ。哀れネトウヨ、完全にピエロである。
ちなみに、前述の産経記事を書いた記者は、2012年に東京23区で行われた陸上自衛隊の総合防災演習をめぐって、“11区で市民グループからの申し入れを受けた区側が自衛隊の立ち入りを拒否していた”との捏造記事を書いた記者である。この報道は社説の産経抄でも扱われたのだが、すぐに11区の自治体が実際には立ち入りも認めたうえで立ち会いにも応じており報道とは異なると強く抗議。産経は誤報を認めて謝罪している。
おそらく今回の『ひるおび!』の一件では、胸躍らせて取材してみたらネット上の話と全然ちがってガッカリ、といったところだろうが、それはともかくとして、この騒動、こうして整理すればするほどおバカな話。とんだから騒ぎだ。
しかも、冒頭でも少し触れたが、だいたい『ひるおび!』はどちらかと言えば政権寄りに「偏向」している番組である。事実、ネトウヨから標的にされた加計問題や森友問題をめぐる報道にしても、当初から明らかに及び腰だった。