法人登記によると、ディンプル社の社長は高橋恒雄氏なる人物で、本社は新宿区となっている。実際に所在地に行ってみると、靖国通りを新宿駅から市ヶ谷方向に10分以上歩いたところ、古いマンションの一室にオフィスがあった。ごく小さなオフィスで、おそらく社員は数人程度と思われる。
こんな小さな会社が神社本庁と直接取引しているというだけでも奇妙な感じがするが、注目すべきは、この事務所に同居するもう一つの会社の存在だ。
ディンプル社の事務所のドア、郵便受けには同社に並んで、「日本メディア・ミックス」なる会社の名前が掲げられている。代表取締役もディンプル社と同じ高橋氏が就任しており、完全にグループ会社といっていいだろう。
実は、この日本メディア・ミックスという会社、あの「皇室 Our Imperial Family」(以下「皇室」)の販売元なのである。
あの、といっても一般の人にはあまり馴染みがないかもしれないが、「皇室」は「日本で唯一の皇室関連のビジュアル誌」を謳う年4回の発行の季刊誌で、皇室関係者や神社関係の間ではよく知られる、宮内庁お墨付きの“皇室ファン雑誌”である。
また、同誌は、フジ産経グループの扶桑社が発行元となっているが、「事実上は神社本庁が出しているようなもの」といわれている雑誌だ。実際、同誌の奥付には「企画 一般財団法人日本文化興隆財団」とあり、この日本文化興隆財団は神社本庁の外郭団体だ(かつては「国民精神研修財団」という名称だった)。
「『皇室』の発行元が扶桑社になっているのは書店販売のための表向きのことです。実際は日本文化振興財団が仕切っていて、扶桑社の編集部は財団から受諾して制作し、書店向け販売をしているにすぎません」(扶桑社関係者)
そして、その神社本庁の外郭団体が出す「皇室」の奥付に、創刊号から一貫して日本メディア・ミックスの名が記されているのだ。同社はどうやら、書店販売以外の直接販売や定期購読、バックナンバーの販売を担っているようだ。
実際、民間信用調査機関のデータによると、日本メディア・ミックスの主な事業は、神社本庁及び日本文化興隆財団と企業の仲介ビジネスで、「皇室」などの出版仲介事業が全体の売り上げ1億数千万円のうち6割を占めている。ちなみに「皇室」は1号あたり約7万部を発売しているというが、そのうちの9割は神社本庁に卸され、全国の神社に売られているという。そして、日本メディア・ミックスは手数料として、「皇室」などの売り上げのうち数パーセントを日本文化興隆財団から受け取っているといわれる。
しかし、神社本庁の財団が「皇室」の編集制作や書店販売を出版事業のノウハウを持つ扶桑社に委託しているのはわかるとしても、直販は自分たちの財団や関連団体でダイレクトにやったほうが利益があがるはず。それをわざわざ、別の民間の会社を間にかませるかたちにしているのは、いったいなぜなのか。
しかも、日本メディア・ミックスは前述したように、神社本庁の不動産を転売して利益をあげたディンプル社と同じ所在地にある、同じ人物が代表をつとめる会社だ。もしかしたら、日本メディア・ミックスが「皇室」の販売をするようになった経緯を検証すれば、ディンプル社と神社本庁の異常な不動産取引の裏側を解明できるのではないか。そう考えて、さらに取材を進めてみた。