さらにここにきて、共謀罪の問題点を指摘する書簡を安倍首相に送った国連の特別報告者、ジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大教授)から、安倍政権の反論がまるっきりのデタラメだったことが明らかにされた。
ケナタッチ氏が「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」などと指摘する書簡を安倍首相に送付したのは、先月18日。ところが、これに対し菅義偉官房長官らは「客観的であるべき専門家のふるまいとは言い難い」「明らかに不適切で一方的」「何か背景があって出されたのではないか」とまくしたて、「個人の立場で出されたもので、国連の立場を反映するものではない」と強弁。敵意をむき出しにした。
また、安倍首相も5月29日の国会で「G7サミットで懇談したアントニオ・グテレス氏国連事務総長も『人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない』旨、述べていました」などと述べた。
実際にグテレス事務総長が述べた言葉はまったく違うもので、国連はプレスリリースというかたちで、「特別報告者は人権委員会に直接報告する、独立した専門家である」と説明したが、安倍首相は「解釈の違い」などと言い張り、未だその嘘説明を撤回していない。
ところが、きょう11日、しんぶん赤旗日曜版がその国連特別報告者・ケナタッチ氏のインタビューを掲載。しかも、このなかでケナタッチ氏は、安倍首相や官邸の主張が明らかなミスリードであると断じ、日本政府の対応が国際社会の一員としていかに恥ずべきものであるかを暴露しているのだ。
まず、ケナタッチ氏は「日本政府はあなたを『個人』とし、国連の総意を反映しないと言っていますが…」との質問にきっぱりとこう答えている。
「安倍晋三首相への書簡を出した際、私は個人の資格で行動したのではありません。書簡は国連のレターヘッドのある便箋に書き、ジュネーブの国連高等弁務官事務所より公式に送付されました。私は人権理事会の決議で授与された権限を、正式な国連の資格のもとに遂行しています。
日本政府は、グテレス国連事務総長が「特別報告者は国連とは別の資格で行動する」と安倍首相に述べたとしています。これは不正確でミスリーディングです。(中略)
国連の公式サイトにも、特別報告者の機能を含む一連の手続きが「国連の人権擁護機能の中心的な構成要素」だとあります。特別報告者はどう理事会の目であり耳であり、声の一部です。その発言を『私的な個人の行動』だとして退けることはできません」