権力に楯突く者の言論が奪い去られた国はどのような末路を歩むのか。それは、日本史の教科書をめくり、治安維持法が施行された後の日本で何が起きたのかを読めば一発でわかる。AAAのメンバーで、SKY-HI名義でラッパーとしてのソロ活動も行う日高光啓は、共謀罪の後に確実にやってくる「戦争の気配」を指摘する。彼はツイッターでこのように綴っていた。
〈トランプ政権以降の国家間、人種間の軋轢や日本でも共謀罪の衆院通過とかなってくると戦争の気配は感じずにいられない〉
30歳になったばかりのSKY-HIとまったく同じ危惧を、現在79歳のちばてつやも指摘する。ちばは自身の戦争体験を語りつつ、作家から表現の自由が奪われることにより引き起こされる悲劇について語り続けてきた漫画家だが、彼は「AERA」(朝日新聞出版)2017年5月29日号のインタビューで、共謀罪施行後の日本と太平洋戦争中の日本を照らし合わせながら、このように危惧を語っている。
「日本は今、ゆっくりとした大きな渦の縁にいる。戦争とか、どす黒いものがたくさん入っていて、その渦に巻き込まれるかどうかの境目だと思う」
「共謀罪もそうだけど、政治家は自分たちはいいことをしていると考えているんですよ。テロが起きないように、よい日本をつくるためだって。ただ、戦前にも同じような時代があったことを知らない。当時を知っている人は、もっと伝えないと」
共謀罪は今後、参議院で審議されていくが、過去3回廃案にしているように、今回も必ず廃案にさせなくてはならない。そのためにも、もっと多くの人に声をあげてほしいと願うばかりである。
(編集部)
最終更新:2017.12.04 03:23