『グッディ』によれば、この男性は、「昭恵さんから電話があって、賢島(伊勢志摩)でサミットをやることが決まった!」と籠池夫人が言ったことじたいを否定したわけではない。それが、正式発表前の15年6月5日10時30分のことではなく、6月9日の「記憶違い」だったというのだ。
しかし、9日という日は伊勢志摩サミット決定発表から実に4日もたっている。当時、このサミットの開催地決定のニュースは、5日午後6時30分の正式発表後、すぐにテレビ・新聞各社が速報を打ち、連日、大々的に取り上げていた。もちろん7日付の新聞各社朝刊でも「来年、伊勢志摩サミット」(朝日)、「伊勢志摩サミット 来年開催」(産経)などと、1面で報道。テレビも朝から夜まで、伊勢志摩の特色や魅力などを特集していた。
しかも、塚本幼稚園は毎年、泊まりがけで伊勢神宮に参拝する「宿泊研修」を行うと謳っており、伊勢志摩でのサミット開催にはとりわけ関心が高かったはずだ。籠池夫妻がその報道を知らなかったというのはありえない。いや、籠池夫妻だけでなく、5日から9日までの4日間の報道をあらためて検証してみたら、9日の時点でほとんどの国民は伊勢志摩でサミットをやることを知っていたと言っていい。
そんな状況で、わざわざ籠池夫人が園長室に飛び込んできて「昭恵さんから電話があって、賢島(伊勢志摩)でサミットをやることが決まった」と報告をするなんてことが本当にありえるのか。
そもそも、9日に、昭恵夫人が電話をかけること自体が考えづらい。というのも、昭恵夫人は現地時間8日夜(日本時間9日明け方)に政府専用機でミュンヘン国際空港を発ち、日本時間9日午後4時47分に羽田空港へ到着するまで、政府専用機内にいたからだ。まあ、衛星回線を使えば電話をかけられなくもないが、そんなことまでして、正式発表から4日もたったニュースを伝えるのだろうか。
では、昭恵夫人から電話はなかったのに籠池夫人が寄付金集めのために「昭恵さんから電話があって〜」と偽ったという可能性はどうか。前述したように9日には、国民のほとんどが伊勢志摩でサミットが開かれること知っている。そんな中で、小芝居を打ったら逆に怪しまれるだろう。仮に籠池夫妻が“詐欺師”だったとしたら、なおさらそんなすぐばれるようことはやるはずがない。
しかも、この男性はやりとりを聞いて「昭恵夫人と親交が深いんだな、これは信用できる」と、寄付を決めたと証言しているのだ。もし、9日にやりとりを目撃したのなら、そういう反応はありえないだろう。
とにかく、このエピソードが9日だったとしたら、あらゆることのつじつまが合わなくなってくる。言い方を変えると、このエピソードじたいが、5日の発表前の出来事でないと成立しないのだ。ということは、やはり、「記憶違い」と修正された9日の日付のほうが事実でない可能性が高いと言えるだろう。
しかも、『グッディ』は日時を確認もせずにこの証言を放送したわけではない。6日の放送では、冒頭に紹介したやりとりに続いて、MCの安藤裕子が大村レポーターに「これ確認なんですが、大阪府の50代の男性の方がそういうふうなことを記憶されていると」と念を押し、大村レポーターが「はい、今日朝あらためて確認をしましたら、やはりご記憶は6月5日の午前10時半だったと」と答えていた。つまり、番組は放送前に少なくとも2回も男性に日付を確認し、男性もはっきりとそう答えていたのだ。