谷氏は、国有地の埋設物撤去工事費についてもFAXで報告していた。午後の証人喚問で籠池氏は次のように読み上げたのだ。
「工事費の立て替え払いの予算化について、『一般的には工事終了時に清算払いが基本であるが、森友学園と国交省航空局との調整にあたり、予算措置がつき次第返金する旨の了解であったと承知している。平成27年度予算での措置ができなかった。平成28年度での予算措置を行う方向で調整中』という内容」
要するに谷氏は、埋設物撤去費用支払い(清算)が前倒しになるように財務省に働きかけたということである。森友学園への支払い時期が早くなれば、籠池氏にプラスになるのは言うまでもない。谷氏の役所への口利きが陳情者への利益供与となったことも紛れもない事実なのだ。
また、このFAXは籠池氏サイドが谷氏に出した手紙を受けてのものだったが、その手紙には、谷氏が「ゼロ回答」どころか「満額回答」を引き出す役割を果たした可能性があることもわかった。
これは、28日の参議院決算委員会で共産党の大門実紀史参議院議員が明らかにしたもので、籠池氏が2015年10月26日付けで首相夫人の安倍昭恵氏側に送ったという手紙には「定期借地契約を50年契約にした上で、早く買い取ることができないか」「賃料が高いので半額程度にしてほしい」という趣旨の要望が書かれていた。周知のように、これらの要求はすべて実現されている。
さらに、籠池氏サイドは、谷氏にこの手紙を送ることになったのは、谷氏から「昭恵さんにお電話をいただいた件ですが」「こちらに文書を送ってください」と電話があったことを証言しているようだ。これが事実なら、明らかに谷氏は昭恵夫人の代わりに口利きをしたことになる。
こうした谷氏の口利きの成果を突きつけられた菅官房長官は、「谷氏の判断でやったこと」と主張し、「妻の関与」を否定し続けている。
しかし昭恵夫人の追っかけ取材をしてきた私の目には、現実離れをした詐欺的主張にしか見えない。冒頭の写真(昭恵夫人と谷氏のツーショット写真)は、2015年3月15日に仙台で開かれた国連防災世界会議の関連シンポジウムに、昭恵夫人と谷氏が参加した時に撮影したもので、昭恵夫人の隣で拍手をしているのが谷氏である。昭恵夫人と谷氏は国会議員と秘書のような密接不可分の関係で、昭恵氏の意向を受けて谷氏が照会したとしか考えられないのだ。
昭恵夫人がシンポジウムや集会で講演や挨拶をする時の決まり文句は「(この問題について)夫に伝えます」「夫に伝えて話しています」。安倍首相に日常的に“直訴”することができる昭恵夫人は、並の国会議員以上の太いパイプを持つ“陳情窓口”といえる。安倍首相は「私人」と言い張るが、実態は大物政治家と同じ影響力を有する「公的人物」といえるのだ。