まず、このFAX問題は、本日午前、参院の証人喚問で、籠池氏が夫人付きの谷査恵子氏からFAXにて返信があったという事実を明かしたことから始まったのだが、籠池氏はこのとき、FAXの現物があるかどうかを聞かれ、いま手元にないがFAXは残っているので追って提出する旨を語っていた。
するとその直後、きょうの『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)で、安倍御用ジャーナリストの山口敬之がこのFAXを独占入手したとして、籠池氏より先にその内容を公開したのだ。
典型的な安倍御用ジャーナリストで、森友問題でも安倍首相と昭恵夫人を徹底的に擁護してきた御仁がなぜ?と思うかもしれないが、これこそが官邸サイドの作戦だった。
山口はなんと、実際には2枚あったFAXの1枚目だけを出してきて、予算措置などの配慮を報告した2枚目の存在を完全にネグってしまったのだ。
いや、ネグったのは2枚目だけではない。実際はこのFAX、1枚目だけでも十分に問題がある。「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」という文言を見れば、昭恵夫人の関与は明らかだし、「今後も見守ってまいりたい」「何かございましたらご教示ください」などの記述は、その後の働きかけの可能性を示唆するものだ。また、首相夫人付きの官僚が財務省に問い合わせをしていること自体、忖度を発生させる原因になる。だが、山口はこれらの問題点をすべて無視し、「希望に添えない」と回答している部分だけを強調して、なんの問題もないと言い張ったのである。
「山口さんにFAXを流したのは明らかに官邸でしょう。ようするに、午前の喚問で、籠池氏がFAXを出してくることを知った官邸が先手を打って、山口さんに1枚目だけを強調させて、たいしたことがない、こんなのことで騒いだら逆に恥を書くという空気をつくりだしたのです」(全国紙政治部記者)
そして、この空気にダメ押しをしたのが、菅義偉官房長官の夕方の会見だった。菅官房長官もやはり、2枚目の詳細には触れずに、「籠池氏側の要望には沿うことはできないときっぱり断っているのではないか。忖度以前のゼロ回答だった」と強弁したのだ。
「平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」という回答のどこがゼロ回答なのか、さっぱりわからないが、つまり官邸はとにかく「拒否した」ということにして押し切るつもりらしい。
さらにもうひとつ、官邸がしきりに仕掛けている情報が「谷氏個人が動いたものであって、昭恵夫人が関与したものではない」というストーリーだ。御用コメンテーターの山口や田崎史郎もやたら強調していたし、菅官房長官は籠池氏の妻が谷氏に宛てた封筒を出してきて、これは谷氏個人に依頼して谷氏個人が動いたものであって、昭恵夫人が関与したものではないと主張した。