しかし、国会の追及でその一端が明らかになった。借地契約締結後の2015年9月4日に、小学校建設工事を請け負った設計会社所長ら森友学園関係者が大阪府にある近畿財務局を訪ね、9階会議室にて、近畿財務局の統括管理官と大阪航空局調査係と話し合いをもっていたのだ。
国会でこのときの交渉記録の提出を求められた財務省は「記録は廃棄した」と回答しているが、そこで疑惑の価格交渉が行われた可能性は極めて高い。
そして、この森友学園と国が面談した日の前日、安倍首相も官邸である人物と会っていた。その人物とは、当時、財務省理財局長だった迫田英典氏(現・国税庁長官)。理財局は国有財産の管理などを担当する財務省の内局、つまり迫田氏は国有地を管轄する部門の“最高責任者”なのである。
首相動静によれば、15年9月3日午後2時17分、迫田氏は理財局長として、財務省の岡本薫明官房長とともに官邸入り。10分間、安倍首相となんらかの話し合いをもっている。
つまり、安倍首相が国有地を統括する財務省の責任者と会った次の日、大阪でその国有地のゴミ撤去費用の支払いや売却の直接交渉がなされているのだ。
しかも、この日の午後、安倍は国会をサボり大阪入り。読売テレビの『情報ライブ ミヤネ屋』に生出演したあと、冬柴鉄三元公明党幹事長の次男の料理店「かき鐵」で食事をしている。
さらに、その翌日の9月5日には、安倍昭恵夫人が森友学園の経営する塚本幼稚園で講演を行っている。安倍首相の国会答弁によれば、このとき昭恵夫人は籠池理事長から小学校の名誉校長就任を頼まれ引き受けたという。
はたしてこんな偶然がありうるのか。しかも、安倍首相と迫田氏が面談したのはこれだけではない。迫田氏は2015年7月に国有地を管轄する理財局長になってから、首相動静に記録されているものだけでも、7月31日、8月7日、9月3日、10月14日、12月15日と、半年の間に5回も会っているのだ。総理大臣と財務省の幹部が会うのは不自然ではない、と考える向きもあるかもしれないが、主計局長や主税局長と違い、傍流の理財局長がこんなに頻繁に総理と会うというのは異例のことだ。実際、前任の理財局長・中原広氏が総理と面談したのは2回だけ、現在の理財局長・佐川宣寿氏もいまのところ2回しか安倍首相と会っていない。