〈先進国最悪レベルの奨学金制度を、多少見直すくらいは考えてやる。〉
〈ただし、条件がある。〉〈国が助けてやるのは、成績優秀者だけだ。〉
と文字が重ねられていく。
……かなり直接的な言葉だが、これもまた、安倍首相の“本音”だろう。実際、自民党マニフェストでも給付型奨学金の財源については具体的に言及していないし、党首討論でも逃げ腰な説明しかできていない。選挙が終わったら手のひらを返して「財源が確保できないので先送り」と言い出す可能性はかなり高い。
当然、パロディ動画は“経済的徴兵制”にも言及。安倍首相が「就職や雇用の安定と所得の向上にもしっかりと取り組みます」とスピーチする上に、〈国に貢献しろ。大事なのは、個人ではなく国家だ。〉〈それでもダメなら、自衛隊に入り海外で戦え。〉〈そうすれば奨学金返済の免除も考えてやらんでもない。〉と、心の声をぶつけるのだ。
いよいよ動画も終盤を迎えると、安倍首相の背景が昨年夏の国会前デモの様子にチェンジ。「将来への不安をなくし、一人ひとりの可能性と活躍を支える。そうすることで日本全体の成長力を底上げしていく」と安倍首相が熱く語る一方で、〈ガマンしろ。権力に従え。〉〈俺もアメリカに尻尾をふり、うるさい経団連にも頭を下げ、〉と打ち出され、安倍首相の背景に櫻井よしこをはじめとする極右組織メンバーが映し出されると〈日本会議の仲間たちとやっとこの地位まで登りつめた。〉と文字が躍るのだ。
ダメ押しは、安倍首相の締めの言葉であり、自民党の参院選キャッチーコピーである「この道を。力強く、前へ。」だ。パロディ動画では、このコピーの前半に〈行き先は言わないが、〉と足されている。そして最後に大きく出される安倍首相の本音の言葉は、〈争点は、改憲〉……。
いやはや、まさにパロディ版に重ねられた言葉の数々こそ、安倍首相がめざす国づくりであり、彼の考える「美しい国」の真相だ。本来、政治家の本音を検証し伝えるのはメディアの役割だが、そうした機能が停止状態に陥っている現状を考えると、このパロディ動画は立派な風刺作品であり、伝える役割を担っていると言えるだろう。
これはぜひ昨年の「あかりちゃん動画」のときと同様、多くの人に再生してもらいたい……と思わずにいられないが、じつは、このパロディ動画、現在YouTubeで視聴することができない。