たしかに、有田氏はこの間、2回ほど北朝鮮に行っている。しかし、「北朝鮮のスパイ」どころか、議員になる前から拉致問題に取り組み、北朝鮮には一貫して批判的な姿勢をつらぬいていた。
また、記事には、横田夫妻でないと絶対にわからないような、これまで語られてこなかっためぐみさんに関する話題が幾つも出てくる。
たとえば、早紀江さんがウンギョンさんに会った際、「あなたのお母さんのことだけど」と切り出した時のことだ。ウンギョンさんは当惑した表情をしたが早紀江はこう続けたという。
「おばあちゃんは、めぐみちゃんが元気で生きていると信じていますよ。せめてみんながあなたくらいのレベルの生活をしているとわかれば、それらのご家族のみなさんは、どんなに喜ばれるでしょうね……。お母さん(めぐみさんのこと)をはじめ、たくさん連れていかれた人がいて、家族はおばあちゃんと同じ気持ちでまっています」とひとりごとのように言って、「最後まで私たちは助けてあげたいという気持ちで頑張って行くから。絶対に希望を捨てないでね。これは国どうしの問題で、あなたの問題ではないのです」
するとウンギョンさんは「日本の悪い人がウソをついているのです」と泣き出し、この話は終わりになったという。
早紀江さんの切実な思い、ウンギョンさんとの会話の詳細が記されているこの記事がでっち上げとは到底思えない。そこで今回浮上した疑問について有田氏本人を直撃すると、その経緯をこう語った。
「写真公開に関しては、横田夫妻と長い時間をかけ話し合ってきたものです。確かに『週刊文春』やマスコミに提供した写真は私が持っていたものですが、5月5日にそれを持参して夫妻と一緒に選び、原稿も6月6日の〆切の日に直接お会いしてチェックしていただいたものです。夫妻は孫やひ孫に会えた喜びを知ってもらいたい。それが実現できたと喜んでもいました。また校了の7日の朝には早紀江さんから電話があり、さらに加筆訂正もしています」
また横田夫妻は写真を公開することで取材が殺到した場合、体力的にも対応できないため事後の対応を有田氏に一任したという。
では、そんな横田夫妻が一体なぜこんな声明を出したのか。それが「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)の背後にいる「救う会」の存在だ。拉致問題に詳しいジャーナリストがこう証言する。
「写真が『週刊文春』に掲載されることを知った『救う会』会長の西岡力氏が横田夫妻に接触、かなりの剣幕で非難したようです。もちろん“こんなことをしたら北朝鮮を利するだけ。めぐみさんの死亡認定や拉致問題の収束に繋がる”とね」