これはいわゆる"両論併記"ではない。意見が多いほうから取り上げるのが"通常"のルールであるうえ、今回は「憲法改正は必要がない」という意見が前年より多くなったのだから、まず、その分析を行うべきだろう。ところが、『ニュース7』『NW 9』はなぜか数としては少ない「改正の必要あり」の主張をまず流して、調査結果をごまかしてしまったのである。
だが、もっと醜かったのは、憲法記念日当日の『NW9』だ。憲法記念日は護憲派・改憲派がそれぞれ集会を開いたが、実は両者のイベントの盛り上がりには極端な差があった。
たとえば、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や「市民連合」などによる護憲派団体が主催したイベントには主催者発表で約5万人が集まった。一方、安倍首相がビデオメッセージを送った「民間憲法臨調」と日本会議のダミー団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」による改憲派イベントの参加者は主催者発表でたったの約1100人。
民放各局はこの2つのイベントを公平に並べて報道していたが、なぜか『NW9』ではそれらの集会には触れず、昨年、自治体の施設で開かれた憲法の催しが増えたという調査の結果をクローズアップ。
しかも、それはたんに自治体調査の結果を伝えただけではなかった。レポートの最初に登場したのは、改憲派である「新しい憲法をつくる国民会議」が3日に開いた集会。「大勢の人たちが集まっています」「およそ500人が集まりました」と隆盛ぶりをアピールするのだ。一方、護憲派については1日に開かれた映画上映会の模様を放送したが、何人が集まったかといった説明はなかった。
レポート内容は自治体施設の利用実態についてだったが、その扱い方は明らかに"改憲側に風が吹いている"という印象を残すものだった。また、自治体調査の結果を報道するにしても、その前に3日に開かれたイベントに触れないというのは、いかにも不自然。5万人が集まった護憲派イベントは日本テレビやフジテレビでさえ伝えていたが、この映像を『NW9』はどうしても流したくなかったとしか思えない。
このように、一見、両論併記に見せかけた上での"憲法学者も改憲にお墨付きを与えているし、改憲イベントにも大勢詰めかけて盛り上がっている"というイメージづくりは、改憲を国民運動化したい日本会議系の極右陣営にとっては都合の良いものに違いない。そして、そうした"極右寄り"報道の最たる例が、2日に放送された『クローズアップ現代+』だろう。