一方、党本部はこの北海道補選の調査と一緒に、全国の衆院選調査も行っており、その結果、出たのが、冒頭の40議席減という数字だった。しかし、全国の調査データは官邸が一時、ひた隠しにしていたようだ。官邸詰めの民放記者が言う。
「週明けの11日(月曜日)になって『党本部の調査データが出たらしい』という噂が飛び交ったんですが、本当に調査したのかどうかも分からないままでした。この日、官邸では北朝鮮のミサイル発射疑惑で騒然としていて、防衛省や外務省の幹部がひっきりなしに官邸入りしていて、それどころじゃなかった。ただ、そのなかに、内閣情報調査室の北村滋情報官が2度も官邸に来ていたんですね。そのうちの1回は北朝鮮問題ではなく、この選挙データの分析結果についてのご注進だったようです」
さらに、本サイトがつかんだ情報では、この少し前に、自民党の谷垣禎一幹事長側が官邸に調査結果を突きつけて「解散を打つべきタイミングではない」と詰め寄ったという。ところが、官邸側の反応は意外なものだった。
「安倍総理を取り巻く今井尚哉秘書官らが『野党が勢い付いて、民進・共産の共闘が加速する前に解散に打って出るべきだ』と理解しがたいことを言い出しているんです。ここにきて、甘利明氏のあっせん利得事件に東京地検のメスが入ったでしょう。それで、逆にスキャンダルを吹き飛ばすために、解散総選挙でガラガラポンにしたほうがいいと考え始めたようです。小渕優子元経産相ら閣僚の不祥事が相次ぎ、あえて解散に踏み切った1年半前と同じ手口をやろうということのようです」(官邸関係者)
ダブル選に慎重だった菅義偉官房長官も、今週になって「解散権は首相にしかない」と解散容認とも受け止められる発言に軌道修正している。もう一人の重鎮、麻生太郎財務相に至っては、解散に乗る気満々らしい。
「麻生さんの場合は敗けたら敗けたで、安倍首相を辞任に追い込んで、自分が首相に再登板するというそろばん勘定もあるのかもしれません」(前出・官邸関係者)
いずれにしても、今回の調査結果流出は、官邸のこうした前のめりぶりを牽制しようと、自民党関係者が仕掛けたもののようだ。
「『解散総選挙で敗ける』ということになれば、党内に動揺が広がって、慎重論が台頭してきますからね。ただ、全国紙が官邸ににらまれるのを怖がって、この調査結果を一切書かなかったうえ、安倍首相自身は、調査なんて関係なく、どんどん解散へ前のめりになっている。この流れは変わらないんじゃないでしょうか」(政治ジャーナリスト)
アベノミクスの失策で景気悪化が深刻になっている中、安倍政権は延命を図るべくこの4年間に3度目の総選挙をやろうというのだから、あきれてモノが言えない。一度の総選挙にかかる費用は600億円超。4年間に2000億円の選挙費用が消える計算になる。そんな金が調達できるなら、どうして待機児童問題など焦眉の課題を解決しようとしないのか。
この政権に国の舵取りをこれ以上任せていたら、国民の幸福などお構いなく、破滅の道を進みかねない。今こそ「ストップ 安倍」を掲げなければならない。
(小和田三郎)
最終更新:2016.04.15 07:34