しかし、これこそがまさに、連中の作戦なのだろう。安倍政権を熱烈に支持し、戦前回帰と人権制限、歴史修正を企む右派勢力はこれまでも、政権批判や安保法制批判の動きを「偏向」「言論弾圧」などと攻撃してきた。そして、最近は、それをさらに一歩進め、中立を装うような別団体を次々と立ち上げ。ソフトなタッチで憲法改正運動を展開する一方で、逆に憲法を守ろうとする動きを「憲法論議をつぶそうとする全体主義」「日本国憲法の信者が戦争を引き起こす」などと倒錯した論理で攻撃を始めている。
おそらく、この視聴者の会の動きもその延長線上にあると考えるべきだろう。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」「憲法おしゃべりカフェ」などの日本会議ダミー団体と連動する形で、憲法改正に反対するテレビ報道を封じ込めるために、この組織を拡大して、テレビ局に圧力をかけていこうとしているのではないか。
まったく卑劣としか言いようがないが、しかし、この「視聴者の会」のHPを眺めていて、ひとつ対抗策を思いついた。
実は同会の賛同者の中には、一人、ちょっと変わった人物が含まれていた。それは、暴力団取材などで知られるジャーナリストの溝口敦氏だ。溝口氏が日本会議や歴史修正主義勢力と関係があるなんていう話はこれまで聞いたことがなく、「なんで?」と思っていると、溝口氏はなんとこんな賛同メッセージを載せていたのである。
〈NHK、民放を問わず、局の体質はゼイ弱です。ともすれば、権力と多数陣営に迎合しがちです。
せめて放送法を盾に民主主義を守り、戦前への回帰を阻止せねば、と思います。〉
そう。これ、視聴者の会とは、まったく逆の主張なのである。溝口氏がいったいどんな意図で賛同者になったのかはよくわからないが、メッセージを受け取った視聴者の会側はさぞかし困惑したはずだ。だが、「政治的中立」という建前を掲げているために、無下に断ることはできず、そのまま掲載せざるをえなかったのだろう。
ならば、憲法や報道の自由を守ろうと考えている識者や報道関係者はこの溝口氏を見習って、どんどん、視聴者の会に参加していったらどうか。そして、この会のHPに「放送法をたてに報道の自由を侵害しようという安倍官邸の動きに抗議します」「報道の公平は、権力をきちんと批判して初めて担保されるものです」といいう正論をメッセージで埋め尽くしていく。
あるいはこの会のHP上では「問題があると感じた報道の情報」を募集しているので、安倍政権の応援団と化している、日本テレビ報道局解説委員・青山和弘氏や、時事通信解説委員の田崎史郎氏らが「安倍政権の主張を無批判に垂れ流している」「中立じゃなく安倍政権に加担している」との情報をどんどん送り付けていく。
中立を装って戦前回帰を狙うこういうダミー団体の跋扈を許さないためにも、本気でこの作戦を提案したいのだが、いかがだろうか。
(編集部)
最終更新:2016.06.21 02:12