「政商、福本邦雄と竹下の女婿――。こうして彼らがセットで京都のローカル局の社長や常務に就任したのである。
許は二人に対し、まる抱えのような格好で面倒を見てきた。(略)京都で内藤新常務の家を用意したのも許だ。許は夫人の紀子名義でKBS京都本社の裏手に高級マンションを買い、それを内藤が使った」
こうして老舗放送局KBSを牛耳った許グループだが、社長に就任した福本は部長会議でこう言ったという。
「この会社は内藤中心で行く。内藤にそむく行為は俺を裏切ることと同じだ。ひいては、それは竹下登に反旗を翻すことになる」
本書では福本、内藤を「竹下の名代」と記している。これまであまり語られることはなかったがDAIGOの実父もまた、義父・竹下を通して政界を渡り歩き、財界フィクサーとともに老舗放送局の乗っ取り支配の片棒を担いだ人物でもあった。
だが許グループのKBS支配は大きな爪痕を残した。89年許はノンバンクからゴルフ開発会社に146億円の融資を受け、その際KBS社屋や土地、さらには放送機材まで放送局まるごと担保に設定したことが発覚、このことでノンバンクが競売申請をされることになる。また許だけでなく、福本そして竹下の陰もが指摘された91年のイトマン事件が勃発したことで、その直後に福本と内藤はKBSから手を引き退任する。
そしてイトマン事件に巻き込まれた形となったKBSは経営が悪化し、94年には会社更生法を申請し事実上倒産した。これは民放放送としては初の経営破綻という異常事態だったが、翌年の95年にはイトマン事件関係者を排除するなどの更正計画が認可されたことで、廃局は免れている。
これら一連の内藤の動きは、もちろん義父・竹下登の存在なしには語れない。長女の一子が金丸信の長男と結婚したこともあり、竹下の首相在任を機にDAIGO一家は旧竹下邸に移り住むなど竹下の三人の娘のなかでも関係が深いが、DAIGOの父親は私生活だけでなく、その政界のダーティな利権をそのまま引き継ぎ、最も深く関与する存在だった。
そして、DAIGOが政治家になったとしたら、こうした闇の利権を祖父だけでなく、父親からもそのまま引き継ぐことになる。そう、ちょうど、安倍晋三がアメリカとの関係や暴力団、パチンコ業者の利権を祖父と父親からそっくり引き継いだように、だ。
テレビで「ういっしゅ」などというおばかキャラを演じているこのタレントを「かわいい」「さわやか」などとほめそやしている行為は、この国の政界に利権にまみれた世襲政治家をもう一人送り出す結果につながるかもしれない。
(田部祥太)
最終更新:2016.02.09 09:23