だが、この一連のツイートや拡散された本棚の画像を見たネトウヨたちからは批判が殺到。ツイッターや2ちゃんねるなどで続々とジュンク堂への批判を繰り出し、不買運動まで扇動したのである。
〈ジュンク堂って反日かよ....〉
〈ジュンク堂マジ終わったな。ただでさえ書籍が売れない時代なのに、左翼に肩入れする偏向本屋。あーあ、さようなら〉
〈ジュンク堂ではもう買いません。シールズなんてキチガイ支持する書店とかバカすぎやろ〉
こうしたクレームがジュンク堂の本部にまで飛び火し、「ジュンク堂渋谷非公式」アカウントは削除、公式アカウントである「丸善ジュンク堂書店」が20日、〈「ジュンク堂渋谷非公式」という名称で活動しているアカウントがありましたが、丸善ジュンク堂書店の公式なアカウントではなく、当該アカウントからのツイートは、丸善ジュンク堂書店の公式な意思・見解ではございません〉と説明する事態となったのである。
しかし今回、MARUZEN&ジュンク堂渋谷店は、本当に責められなければならないことをしたのだろうか? 『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』(ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会)の版元である、ころから代表の木瀬貴吉氏は、今回の騒動についてこのように所見を語る。
「私も騒動を聞いてすぐ、MARUZEN&ジュンク堂渋谷店を訪ねました。展示はいまも撤去されていません。これは希望だと思うし、フェアは“時代の空気”を反映したものだと思います。一般論として、書店は流通を担い、あらゆる言論、考え方、意見を読者へ届ける役割があります。そのうえで読み手に判断を委ねる。ですから、たとえ客であろうが、外野が『この本を出せ、この本は出すな!』と言う権利はありません」
言論の流通を担保することは、多種多様な議論を根底とする民主主義に不可欠なものだ。その前提となる表現の自由は、民族差別等を助長するような、社会的合意の枠組みからひどく逸脱するものでないかぎり、原則としていかなるものにも保障されなければならない。こうした“表現”の観点から木瀬氏が続ける。
「一方で、書店員もこの国で暮らす、いち生活者です。社会から受け取った感覚を表現するのは当然のこと。おそらく、企画した書店員も、フェアをするか否か考えたと思います。そのうえで『自由と民主主義のための必読書50』を開催した。ということは、このフェアを生み出したのは、現在の社会状況そのもの、と言えます」