こうした歴史を知っていたら、笑いながら日本の萌えコンテンツの拡大を「大東亜共栄圏」などとは絶対に言えないはずだ。アジア諸国の人々の感情を逆撫でする魂胆でもあるのかと思われても仕方がない。
当然、芝村氏のTwitterアカウントには批判の声も多く集まり、「大東亜共栄圏」発言について謝罪を求められたのだが、芝村氏はこのように反論した。
〈謝罪は不要かと。文脈を意図的に外して私の発言の単語だけを引っ張って別の定義をかぶせてご意見されるのとか、周辺諸国の歴史を直視しろという助言を無視して単語禁止からの思考停止はまあ、敵性語禁止してた軍国主義まんまを演じ、正当化している方には何言っても無理です〉
ようするに“特定の単語使用を禁止してくるほうが軍国主義だ!”と、まるで小学生の「バカっていうほうがバカなんですー」論法で応戦したのだ。あの〜、そもそも単語を使うことそのものでなく、使い方が問題になっているんですけど……。芝村氏は「大東亜共栄圏」という歴史用語を肯定的に用い、世界に発信したことの問題性をまったく理解できていないらしい。
だが、それも当然かもしれない。そもそも芝村氏といえば、コアなゲームファンからは不遜な態度と歯に衣着せぬ言動でも知られており、Twitterでも「右」を自称しているような人物だ。例のトークショーのなかでは、あわてて言い直す様子も見られたが、それにしても「大東亜共栄圏」なんて言葉が口から自然に出てくるのは、ふだんから肯定的な文脈で言い慣れているということだろう。
実際、『刀剣乱舞』は、今回の発言以外の場所でも政治的・思想的な偏向に疑念が持たれている。たとえばゲーム内で、プレイヤーの敵役を「歴史修正主義者」と名付けるネーミングセンスだ。
歴史修正主義とは、世界的な認識としては、歴史的事実に対して、たとえば「南京大虐殺はなかった」とか「アウシュビッツのガス室はなかった」というように捏造・歪曲する立場を指す言葉であるが、『とうらぶ』においては「タイムスリップして過去に干渉することで歴史改変を目論む存在」とされている。政治的に繊細な単語を本来とは違った用法で設定に組みこむ意図はなにか。
芝村氏自身による説明を読めば合点がいく。じつは、芝村氏はTwitterでこんな歴史観を披露しているのである。少し長くなるがまとめてみよう。