「やられたら、やり返さなきゃ駄目なのよ。だから、第二次大戦で徹底的にやられて、七十年かかって、まだやり返していないっていうのは、情けない話だ。実に情けないわ」
「敵に押しつけられた憲法九条だか何だか知らんけど、それを「平和主義」って、どこの平和なんだ」
「日本で結婚しない婦女子が多すぎる! だから、さっさとさらってきて、どんどん子供を産ませたらいいんだ」
……もう、そのへんの日本の保守オジサンにしかみえないが、問題は過激派集団に対する評価を口にしている箇所だろう。
たとえば、過激派である「パキスタン・タリバン運動」がペシャワルの学校を襲撃した事件には、「それは、イスラム教の崩壊を招くからね、そのままだったら」と容認。女性が学校に通っていることも「それは“堕落”だよ」「ええ? それで娼婦になっていくんでしょ? みんなねえ」「本当は、家から一歩も出したらいけないんだよ、未成年のうちは(机を一回叩く)」と興奮。そして、「イスラム国」のバグダディを「いいねえ。久々にいいねえ」「あの小さいのに、よくカリフを名乗った。偉い。うん。偉い、偉い」と褒め称え、「まあ、私が「最後の預言者」っていうことになっているから、出しにくい。だから、「プチ預言者」と呼ぼう」とさえ口走るのである。
大川氏がムハンマドの霊言を行うのはこれが初めてではないが、今回はさすがにヤバイと思ったのか、本書には何度も(注。あくまで霊人の意見である)(注・過激な発言であるが、霊人の意見のままとした)という注意書きが登場する。ついにはムハンマド(の霊言)までもが、「今日の私は、これは“映倫に引っ掛かった”ような、無駄仕事をしちゃったかなあ」と心配し、「今日は、おべんちゃらを言うやつが一人出てきてないから(中略)それで、発禁処分になりそうなんだよ。「国際(本部の人間)」は、全然役に立たない。もうクビにしろ、早く」と幸福の科学内部の人事批判まではじめる始末。
とはいえ、孔子からキムタク、本田圭佑、小保方晴子さんまで、誰彼構わず霊言本を出版してきた過去を考えると、今回のムハンマド本も通常通りの“幸福の科学クオリティ”であることに違いはない。ただ、過激派によるテロやバグダディの行動を、ムハンマド(の霊言)に肯定させるというのは、イスラム教への冒涜であり、イスラム教徒を侮辱する行為ではないか。
しかし、なぜかだれもこの本を追及しない。いちいち真面目に取り上げるのもバカバカしいと思っているということなのか。それとも、メディアにとってみれば、幸福の科学はありがたい広告主であり、批判記事を書けばすぐさま訴訟を起こしてくる厄介な存在だから、極力触れたくないということか。
いずれにしても、シャルリーの風刺画がイスラム教徒へのヘイト表現になっていないかを検討する本が叩かれ、この言いたい放題の本が問題の俎上にもあがっていないのは、なんとも理不尽な気がするのだが……。
(田部祥太)
最終更新:2017.12.13 09:33