だが、無責任なのはNHKだけではない。たしかに今回の虚偽・捏造放送の責任はNHKにあるものだが、問題の男性の取材は公式記録映画のためにおこなわれたものであり、当然ながら河瀨監督には「どうやってこの男性を見つけ出し、取材しようと考えたのか」「取材後に証言の裏付け確認はおこなったのか」「どうして五輪反対運動をおこなってきた市民団体に話をじっくり訊こうとしなかったのか」などなど、説明すべき問題は山程あり、同時に説明する責任がある。
しかし、既報でも伝えたように、河瀨監督は5日、〈めちゃくちゃ面白かった!自分達に都合が悪いとすぐBPOだの放送倫理違反だの言ってくる人たちの誹謗中傷に負けずこれからも頑張ってください〉というあるTwitterユーザーの投稿を引用リツイートし、〈はい(キラキラマーク)〉と返信。昨日NHKが謝罪し、実際にBPOが審議すべき放送倫理違反が問われる事態となっているというのに、本日10日の18時時点では、この問題に対して何の反応もおこなっていないのである。
このように、これほどの問題を引き起こしながら、無責任な姿勢を貫くNHKと河瀨監督。だが、今回の放送によって「東京五輪の反対デモは金で動員されていた!」などというデマがネット上で拡散され、自民党の和田政宗・参院議員という国会議員までもが〈事実なら民意をゆがめようとする工作が何者かによって行われていたということ〉などとデマを喧伝。その結果、市民団体や参加者が謂れのない誹謗中傷を受けているのだ。しかも、NHKが市民団体やデモ参加者に謝罪もせず、問題を有耶無耶にしているせいで、ネトウヨたちはさらなる攻撃を開始している。
実際、和田議員のツイートを拡散させていた安倍応援団のジャーナリスト・門田隆将氏は本日、〈左翼の猛烈な抗議でNHKが白旗らしい。それなら反対運動のデモにはお金が支払われています、との新テーマでやり直しなさい〉と投稿。同じく安倍応援団の有本香氏も、NHKが謝罪したことを受けて、〈謝罪がかえって墓穴掘ったね。要するに、いろいろなデモで参加者にお金が支給されていて、この男性のように小遣い稼ぎ感覚で「今度はあれ行こうかな」とする人がいたということ〉などとツイートをおこなっている。
すでに拡散されてしまったデマや、謝罪後に吹き上がっている新たなデマや印象操作、誹謗中傷を、いったいNHKと河瀨監督はどうやって責任をとるつもりなのか。謝罪になっていない謝罪文だけで問題を終わらせるわけには到底いかないだろう。
(編集部)
最終更新:2022.01.13 12:30