そして、このモデルナワクチンの供給が3分の1になった問題についても、河野大臣は姑息なごまかしをつづけている。
たとえば、前述した12日に生出演した『報ステ』で河野大臣は、EUとの交渉の際にファイザー製を確実に輸入するためにモデルナ製ワクチンの供給先送りを承諾したと主張。まるで“ギリギリの交渉でカードを切って俺は勝った”と言わんばかりのドヤ感だったが、モデルナの供給をあきらめたからファイザーが入ってきたなんて話は、なんの証拠もないし、言い訳にすらなっていない。
さらに、13日の衆院内閣委員会の閉会中審査では、立憲民主党の今井雅人衆院議員から“ゴールデンウィークごろにモデルナ製ワクチンの供給量が減ることを示していれば職域の要望も急増しなかったのでは”と追及されると、河野大臣は「4月、5月時点でまだ職域をどうするか決まっていなかった。言い掛かりでしかない」と逆ギレまでした。
まったく言い掛かりをつけているのはどっちだ、という話だろう。供給量が3分の1しかないと知りながら、5月24日からモデルナ製ワクチンを使った自衛隊による大規模接種センターを開始した上、そこから1週間後の5月31日におこなわれた関係閣僚会合で職域接種実施の方針を固め、翌6月1日には厚労省が職域接種開始の事務連絡を自治体に発出。この時点ですでに政府は企業や大学だけではく、下請け企業などの取引先や従業員の家族、近隣住民までをも接種対象に含める方針を掲げていた。つまり、モデルナ製ワクチンはわずかな供給量であるにもかかわらず、限定的な実施にとどめることもせず、むしろ大風呂敷を広げたのだ。その上、河野大臣は「ストップするくらい頑張って」などと発破までかけた。
これは「要望を見誤った」などということではなく、あきらかに足りなくなることがわかっていながらの「確信犯」だったはずだ。そして、その理由は、「都議選」と「東京五輪」の影響を見越してのことだ。
実際、河野大臣は6月21日に職域接種会場で「VACCINATED」(接種済み)と書かれたマスクを付けて自身も接種を受けたり、申請を一時ストップしたあとであるにもかかわらず吉本興業やKADOKAWAグループの職域接種を視察し、接種が進んでいることを大々的にPR。また、都議選では自民党候補者の街頭応援演説に立ち、「ワクチン接種、大変なスピードで打っていただいております」などとアピールに余念がなかった。
また、職域接種のスタートは東京五輪関係者への優先接種に対する「不公平感」を有耶無耶にさせた。本来、重症・感染リスクの高い人やエッセンシャルワーカーへの段階的な接種を徹底させるべきなのに、大企業や大学での接種を解禁させることでその優先すべき順番というルールをぶち壊し、東京五輪関係者への優先接種という「特例扱い」をごまかしたのだ。
そうして都議選が終わり、東京五輪強行開催が決定的となったことを受け、しれっと河野大臣は“じつは1370万回分しかありませんでした”“4月末には知っていた”と言い出した。これは完全に国民を欺いた背信行為だが、いまだに河野大臣は「言い掛かりだ!」などと逆ギレして、自身の責任をごまかそうとしているのである。
いや、そればかりか、河野大臣は早くも職域接種について逃げを打つような発言までおこなっている。昨日15日におこなわれた講演で、モデルナ社から日本独自の保存期間や書類作成手続きが煩雑だとして「なんとか世界標準に合わせてほしい、と言われている」とし、厚労省に見直しなどを求めていると発言。もし今後、手続きが問題となってモデルナからの供給に遅れが出たとしたら調整できなかった河野大臣の失態にほかならないが、こうして現段階から「厚労省が悪い」という印象づけに躍起になっているのである。