本日の囲み取材で吉村知事は、国からのワクチン供給が滞っていることから都市部優先で供給するよう政府に要望すると発言。明日2日に菅義偉首相や河野太郎・ワクチン担当相と面会して要望するという。つまり、公務外である選挙応援目的の東京行きに批判が起こると、今度は「公務」を理由にして東京に行く、と言い出したのだ。
当たり前だが、現在の感染状況を考えればリモートで訴えるべき話で、わざわざ東京に行く必要などない。しかも、記者から本日告示された兵庫県知事選の応援に入る日程について尋ねられた際には、吉村知事はこう述べた。
「ちょっといまから、まず公務があるんで東京行きますので、きょう夕方から入りますから、あの……戻ってくるのが土曜日の夜です。それ以降になると思いますけど、できるだけ早く兵庫の応援に入りたいと思います」
明日2日に面会があるなら、面会が終わってすぐ大阪に戻ってこられるはずだ。なのに、戻ってくるのは3日の土曜日の夜。ようするに、当初の予定どおり3日には東京で維新候補者の応援をし、それから戻ってくるということだろう。
大阪府民を欺き、「公務」などという言い訳を持ち出してまでルール破りの東京行きを決行する──。絶句する酷さだが、しかし、この「府民・市民の命を守ることより自己利益を優先させる」という姿勢こそが、維新の正体なのだ。
実際、吉村知事は新規感染者数が600人を超えて右肩上がりとなっていた今年4月初旬にも、宝塚市長選の応援や富山市長選立候補者のトークイベントに参加しようとしていた。当然、これらには批判の声があがり中止となったが、コロナ対応そっちのけで他県の選挙活動をしようとしていたのである。
また、2018年9月に大阪を直撃した台風21号では府・市ともに災害対策本部を設けず、家屋倒壊や冠水、停電や倒木被害などの被害が出ていたにもかかわらず同月7・8日には当時府知事だった松井氏は対応を放り出して沖縄県知事選の自公候補を応援するために沖縄入り。さらに翌9日からは万博開催地投票対策と称してイタリア、デンマーク、ハンガリーの3カ国を回る海外出張に出かけてしまった。
そして、もっとも象徴的なのは、感染者数がやはり拡大傾向に入っていた最中に強行された昨年11月の「都構想」住民投票だ。吉村知事は第1波のときから「うがい薬でコロナに打ち勝てる」だの「大阪ワクチン」だの“やってる感”アピールばかりでロクな対策を取ってこなかったが、第1波が過ぎ去ると都構想住民投票にかまけ、まともな対策を打たなかった。その結果、都構想の住民投票がおこなわれた11月1日に大阪は東京を上回る123人もの新規感染者数となり、翌12月には自前の医療体制で対処することができず、自衛隊の派遣を要請せざるをえない状況に追い込まれたのである。
この、府民・市民の命の安全よりも「都構想」を優先させて住民投票を強行した背景にあったのは、吉村人気が高いなかで投票をおこなえば賛成が上回るだろうという姑息な計算だったことは想像に難くないが、今回の都議会選の応援のために吉村・松井両氏が来京するのも同じこと。前回の都議会選で維新は4人の公認候補者を立てたものの獲得議席は1議席で終わったが、今回は前回を上回る13人もの候補者を立てている。これは全国区の顔となった吉村知事の人気にあやかって党勢拡大を図ろうという戦略で、実際に維新候補者の選挙ポスターではデカデカと吉村知事の写真を打ち出しているものもある。つまり、吉村知事はこの感染状況のなか、党利党略のために「客寄せパンダ」として応援に向かうのである。