首相官邸HPより
昨日、シンガポールで行われたトランプ大統領と金正恩委員長の米朝首脳会談。保守系マスコミを中心に、米朝の合意文書に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が盛り込まれなかったことをネガティブに伝える報道が目立つが、それでも、わずか半年前には「全面戦争秒読み」とまで言われた米朝関係を考えれば、世界の平和にとって大きな一歩と言えるだろう。
他方で、まったく評価するに値しないのが日本の安倍首相だ。なにせこの間、日本人拉致問題について「米朝会談は拉致問題解決の千載一遇の機会」と国内向けにPRしてきたのに、肝心の会談ではまったく“進展なし”だったからである。
たとえば安倍首相は今年4月、拉致被害者家族らの集会のなかで米朝会談について「是非この千載一遇の機会を捉えて、この拉致問題について議題に乗せ、解決を強く迫ってもらいたい」と演説。「このチャンスを逃してはならないと、私もそう決意をしているところでございます」と自身のリーダーシップをアピールした。
また米朝会談前日の11日には、トランプ大統領と電話会談の後、都内の派閥パーティに出席。手を振り上げながらを自慢げにこう述べると、会場は拍手に包まれた。
「(トランプ大統領に)私からあらためて、『拉致問題について、しっかり提起してもらいたい』。『それは安倍さん、100%保証する』と、力強い返答をいただいたところでございます」
それが、蓋を開けたらどうだったか。周知の通り、合意文書では拉致問題の「ら」の字もなく、トランプ大統領も会見で「提起した」とごくごく簡単に述べたのみ。「提起」の内容については一切明かさず、金委員長の反応はおろか、会話のシチュエーションすら説明がなかった。
だとすれば、「千載一遇のチャンス」「100%保証すると言われた」などと喧伝してきた安倍首相は、この結果に「遺憾の意」を示すのが当然だろう。
ところが、である。安倍首相は一言の苦言を呈することなく、逆に、トランプが会見中の17時56分には早くも拉致問題の「提起」について「高く評価」「感謝したい」と述べ、早々とぶら下がり会見を切り上げ、立ち去ろうとしたのである。