だが、この指摘はまったく当たらない。たしかに公益通報者保護法において保護の対象となるのは犯罪行為や刑事罰につながる法令違反行為の通報と定められているが、今年3月に改正された「公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)」では、《各行政機関は、通報者等に対し、通報又は相談をしたことを理由として懲戒処分その他不利益な取扱い(嫌がらせ等の事実上の行為を含む。)をしてはならない》とある。
さらに、2013年に特定秘密保護法案について説明した自民党の森まさこ少子化担当相(当時)は、「政府中枢や当局内部の違法行為や重大な失態は『特定秘密』の対象にはなりえない」「告発者は公益通報者保護法で保護される」とはっきり述べていたではないか。
だいたい、今回の文科省職員らによる告発は公益性が非常に高い。こうした告発者を保護するのは当然で、それを政府が「粛清するぞ」と脅すとは、恐怖政治を敷く外道独裁国家としか言えない。
いや、この加計学園問題では、もはや安倍政権はそうしたクズっぷりを取り繕うとすることさえしない。前川氏の「出会い系バー通い」をリークし、菅義偉官房長官は「売春や援助交際の温床になりかねないと指摘される店」「女性を外に連れ出してお小遣いを与えたと本人が言っている」などと徹底して個人攻撃を仕掛けた。
それは、官邸の下部組織に成り下がった読売新聞も同じだ。前川氏の会見では、義家副大臣と同じように「守秘義務違反では?」などと質問。この質問について池上彰氏は、「週刊文春」(文藝春秋)の連載コラムのなかで、「おい、マジか」と感じたといい、質問した記者は「当局が「国民に知らせたい」と考える内容だけが公表され、都合の悪い情報は「守秘義務」の名の下に拒否する。そういう国家になってもいい」という発想をしているのだと喝破している。