さて、そんな古市くんだが、最近、意外な役職に抜擢されたことをご存知だろうか。そう。自民党が立ち上げた「歴史を学び未来を考える本部」にオブザーバーとして起用されたのだ。
先日も本サイトで取り上げたが、この「歴史を学び未来を考える本部」は安倍首相が肝いりでつくらせた総裁直属の組織。しかも、実質的な仕切り役はあの稲田朋美政調会長だ。稲田は弁護士時代、戦時中の南京大虐殺で「百人斬り」で処刑された元少尉2人の名誉毀損訴訟を担当。初当選翌年の06年に議員連盟「伝統と創造の会」 を結成すると、みずから会長に就任する。野党時代のいまから5年前には、竹島に近い韓国領の「鬱陵島」を視察しようとして入国拒否された。安倍の肝いりで閣僚に就任したのちも、毎年靖国参拝を欠かさない。
そんな人物が本部長代理として仕切っているのだから、この組織が狙っているものは明らかだ。事実、「歴史を学び未来を考える本部」発足に先立つ11月28日、安倍首相は「憲法改正をはじめ占領時代につくられた仕組みを変えることが(自民党)立党の原点だ」との演説をぶち、同本部長である谷垣禎一幹事長は、先の大戦後のGHQによる占領政策や現行憲法の制定過程、慰安婦問題や南京事件を検証するという方針を明かした。
しかし、だとしたら不可解なのは、偏向した議論がおこなわれるのが明らかなこんな会のなかに、古市のような若手学者が入っている理由、だろう。古市は前述のように、無自覚な差別意識がだだ漏れすることはあっても、頭の悪い歴史修正主義に与するという印象はなかったはずだが……。
この一見、ミスマッチに見える取り合わせの背景には、同本部の仕切役・稲田朋美と古市の最近の急接近ぶりがある。古市は14年4月から開催された「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれているのだが、この時、担当大臣を務めていたのが、特命担当大臣の稲田だった。
そして、二人は会議を通じて、どんどん親しくなり、関係は稲田が政調会長に転出してからも続いた。最近は、古市が自分の人脈を積極的に稲田に紹介するといったこともしているようだ。たとえば、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表が、自身のブログでこう書いている。
〈日本初の女性総理候補の一人として注目が集まる、稲田朋美議員とお話ししました。「ひとり親を救えプロジェクト」の呼びかけ人でもある、気鋭の社会学者、古市憲寿さんからご紹介を頂きました。〉
〈(稲田氏は)ひとり親だけにとどまらず、マイノリティの人々への共感と、環境改善への意志を示されました。〉