これにはさすがに田原も、「土下座は誤報だった」という旨を説明するが、百田センセイは聞く耳をもたず「いや、生徒に韓国人たちの前で土下座させた高校はいくつもあります。体育館のような広いところで、生徒全員に土下座させるのです」と自分の都合と思い込みで主張し続ける。
また憲法9条の改正についてはこんなことも口にしている。
百田「改憲派の私は『軍隊をもって戦争を抑止する』と考える。21世紀の世界にある軍隊のほとんどが『戦争抑止のための軍隊』ですからね。軍隊があるからこそ戦争が起きないんです。戦後から今日まで、ずっとそうでしょう。ヨーロッパでNATO軍とワルシャワ条約機構軍が向き合っていたけど、戦争は起こらなかったじゃないですか」
はあ〜? 戦後世界で戦争がなくなったなんて初めて聞きました。21世紀に入ってからだけでもイラクへの対テロ戦争、終焉なきパレスチナ紛争、ソマリア、リビア、コンゴ、シリア、あれは何なのでしょう? NATO軍にしてもボスニアやアフガン、リビアの空爆など軍事行動を行っているではないか。
在日問題についてもほとんど在特会の代理人のようなデマをふりまいている。
「『通名』が認められているとか、生活保護や税制の優遇などという噂もある」「在特会でも韓国人の商店を襲ったりはしない」
「韓国人慰安婦たちは高給取りだった」
また、尖閣諸島をめぐる中国との関係、そして日米安保の問題に話が及んだ時は、こんな荒唐無稽な珍説を披露するのだ。
「仮に中国軍が尖閣諸島に攻めてくるとしましょう。アメリカ軍は日本を守るために戦い、兵士が撃たれて死ぬ。後ろで日本は何をしているかといったら『頑張ってください。武器とか食料とか、後ろからなんぼでも応援しますから』。アメリカ兵は『なんで日本のために、わしらが撃たれて死なねばならんのや』と思いますよね。そんなんでアメリカが果たして戦いますか。戦わないですよ」
そして、2人の会話はだからこそ集団的自衛権が必要だという話になっていくのだが、ちょっと待ってほしい。そもそも現行の憲法解釈では、もし尖閣が攻撃されたら、それは集団的自衛権とは無関係に個別的自衛権が発動され、当然、自衛隊が対応できるんじゃないのか。どうやら百田センセイは集団的自衛権と個別的自衛権の区別もついてないらしい。
田原は一応「もちろん自衛隊は戦います。これは個別的自衛権でね」とやんわりフォローしているが、そんなフォローにも気付かない百田センセイ――。都合のいい “事実”だけを抽出し、その後の論を展開するやり口は健在で、期待通り事実誤認とツッコミどころ満載の対談本だ。