「選択的夫婦別姓」制度化を潰した自民党・極右安倍チルドレンの面々! 安倍前首相も全面協力、菅首相は言いなり

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自民党HPより


 期待させておいて、この有り様──。安倍晋三・前首相の辞任により進展が望まれていた選択的夫婦別姓制度の導入だが、またも実現は遠のいた。すでに報道されているように、5年に1度、政府がまとめる男女共同参画基本計画案に対して自民党内でいちゃもんがつき、表現を大幅に後退させたからだ。それが今週中にも閣議決定される予定だ。

 選択的夫婦別姓をめぐっては、第5次男女共同参画基本計画の策定にあたって内閣府の男女共同参画局が実施したパブリックコメント(8月1日〜9月7日に実施)でも別姓導入を求める意見が約400件以上も寄せられ、一方で反対意見はなかった。そんななか、導入に反対してきた安倍前首相が辞任し、さらには菅内閣の発足で橋本聖子・女性活躍担当相が実現に向けて検討を進める方針を男女共同参画基本計画案に盛り込みたいという考えを表明。一気に制度化に向けて動き出す……はずだった。

 しかし、蓋を開けてみると、計画案は自民党の部会で修正に次ぐ修正に追い込まれ、「選択的夫婦別姓」という文言までをも削除して、「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方」という本質を覆い隠す表現に変えられてしまったのだ。

 それだけではない。原案では、夫婦同姓を法律で義務付けている国は世界で日本以外にはないことや、国連の女子差別撤廃委員会が2003年から日本に繰り返し制度への懸念が表明していること、ジェンダーギャップ指数で153カ国中121位になっていることなどにも触れられ、〈我が国の女性の地位に係る国際的な評価は著しく低い〉〈こうした国際的な視点も踏まえていく必要がある〉と言及していた。

 ところが、こうした客観的事実やデータも、自民党内での修正によって本文からですべて削除。逆に、〈戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ〉や〈家族の一体感を考慮〉といった文言が追加されたのだ。

 夫婦別姓で「家族の一体感」が損なわれるとは、事実婚で別姓を選んでいる国内の家族や海外の別姓家族に対して失礼極まりない話だし、日本において国民全員が「氏」を名乗らなくてはならなくなったのは明治以降のことで、明治民法によって夫婦同姓が定められたのは明治31(1898)年で大して歴史もない。

 さらに、夫婦同姓は「家族の一体感を深める」などという理由から定められたわけではなく、戸主を絶対権力者に位置づける「家制度」では「氏」を「家」の名称としていたからだ。この「家制度」の下で女性の地位は圧倒的に低く設定され、妻は戸主に絶対服従、夫の所有物のような存在だった。つまり夫婦同姓とは、女性の尊厳が著しく貶められた古い価値観の上に成り立っているものだ。

 しかも、選択的夫婦別姓制度は「どちらを選ぶこともできる」という選択肢を増やすだけの話。家族は同姓でいたいという人はそれを選べばいいわけで、逆に結婚相手と同姓にすることに不便を感じたり、抵抗がある人に選択する自由がひとつ生まれるだけだ。

 だが、その選択の自由さえも、一部の反対派の自民党議員たちが奪い、原案より表現を大幅に後退させたのだ。

夫婦別姓を潰した山谷えり子、高市早苗、衛藤晟一、片山さつき、有村治子、長尾敬、赤池誠章…

 そして、その自民党議員とは、言うまでもなく、安倍前首相と軌を一にしてきた極右議員たちだ。

 実際、選択的夫婦別姓制度の議論が活発化していた11月下旬には、反対派議員が「『絆』を紡ぐ会」を結成。第5次計画案を議論する自民党の部会が開催された12月4日の前日には、同会が下村博文政調会長に慎重な対応を求める提言を渡している。そのとき提言をおこなった反対派議員は、山谷えり子・元拉致問題担当相に高市早苗・前総務相、衛藤晟一・前少子化対策担当相、片山さつき・元地方創生担当相、有村治子・元女性活躍担当相、長尾敬衆院議員、赤池誠章参院議員らといったネトウヨ極右議員の面々だ。

 たとえば、本サイトでも再三取り上げてきたが(既報参照→https://lite-ra.com/2014/09/post-444.html)、山谷氏は「性教育は結婚後に」とトンデモ発言をおこない、有村氏は人工中ぜつにも反対。高市氏は最高裁で婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法規定を違憲とする判決が出た際、「ものすごく悔しい」と発言するなど、夫婦別姓のみならず、女性の権利や自立、社会進出を阻む発言を繰り返してきた。こうした人物を、安倍前首相は「女性の活用」として大臣に引き立ててきたのである。

 そして、12月4日におこなわれた自民党内の会合は、案の定、こうした反対派議員が政府原案に対して「自民党はかつて公約で夫婦別姓を否定した」「世論を誘導するような恣意的な書きぶりだ」などと猛批判。賛成派の自民党議員が「反対の人の声が大きくて、全然議論にならない」と漏らしたほどで(朝日新聞デジタル4日付)、結論は次回に持ち越された。

 しかも、反対派は声が大きいだけではなく、その批判も滅茶苦茶。たとえば、山谷元拉致問題担当相は「両親の名字が違うとなれば、お互いの実家が張り合ってしまうリスクも高まる。お年玉の額がそれぞれの実家で違うとか」(毎日新聞11月26日付)などと主張。衛藤前少子化対策担当相は「夫婦別姓でないと困るという意見が出ているが、エビデンス(根拠)がしっかりしていない。お粗末な中身だ」と会合後に発言している。「エビデンス」がないのは「お年玉の額に差が出る」だの「家族の一体感」だの「歴史を踏まえ」などと言っている反対派のほうだ。

 だが、つづいて議論がおこなわれた8日も会合は紛糾し、反対派が原案の削除や修正を要求。10日には原案を大幅に後退させた修正案が示されたのだが、じつはこの日、長尾議員はこんなツイートをおこなっていた。

〈あの会議をこちらの重要会議にぶつけて来た(ーー;)
重要会議に出席予定だった前総理も、迷う事なく瞬時にご了解頂き延期したよ。〉

 前総理というのは、言うまでもなく安倍前首相のことだろう。つまり、長尾議員は安倍前首相とともに別の会議に出席予定だったが、選択的夫婦別姓の会合が開かれることになり、安倍前首相が「迷う事なく瞬時に了解」したことで延期させた、というのである。

 安倍前首相といえば、「夫婦別姓は家族の解体を意味します」「左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)」(「WiLL」ワック2010年7月号)などと語ってきた反対派の急先鋒だったが、こうしていまも制度導入を阻止すべく、子飼い議員を動かしているのである。

杉田水脈は「夫婦別姓の文言も削除させた」と勝ち誇り、のちに訂正

 実際、性差別発言で知られる安倍チルドレン・杉田水脈議員は17日にこのようにツイートをおこなった。

〈最終的に男女共同参画基本計画案から「夫婦別姓」の文言も削除させました。一安心です。〉
 
 杉田議員といえば、今年2月に国民民主党の玉木雄一郎代表が夫婦別姓について代表質問で取り上げ、「速やかに選択的夫婦別姓を実現させるべきだ」と訴えた際、「それなら結婚しなくていい」とヤジを飛ばしたと見られている張本人だが、そんな人物が「文言を削除させた」と勝ち誇ってみせたのだ。

 その後、杉田議員は〈「削除させました」→「削除されました」の間違いです〉などと修正したが、こうした極右議員の動きを見れば、一気に動き出すと見られた選択的夫婦別姓制度の導入は、女性蔑視や差別を扇動してきた“安倍チルドレン”の巻き返しによって、進展するどころか大きく後退に追いやられてしまったのである。

 しかし、こうした安倍一派の動きや安倍前首相の影響力よりももっと問題にすべきことがある。リーダーシップを発揮することなく黙認していた菅義偉首相の姿勢だ。

 実際、菅首相は過去に選択的夫婦別姓の推進を求めており、11月6日の参院予算委員会では日本共産党の小池晃議員がそれを紹介、菅首相が「(過去の言動に)責任がある」と述べたことで野党席からも拍手が起こった。選択的夫婦別姓の導入に期待が集まっていたのは、こうした菅首相の発言もあったからだ。

 ところが、自民党内の極右議員たちが反発して動きを活発化させても、菅首相は自民党総裁として党内のとりまとめに力を入れることはまったくなかった。現に、11日に生出演したニコニコ生放送の番組では「なかなか難しい」「党内で大変な議論があったようなので、そういうことをしっかり見ながら判断しないと。あまり感情的にならないように……」などと、まるで他人事のようにコメント。そこには、携帯料金値下げで民間企業にまでプレッシャーをかけ、党内で反発があっても「GoTo」を頑なに中止しなかった“押しの強さ”は微塵もなかった。

 安倍前首相のように極右思想を前面に押し出すこともなく、「実務型」「持ち味は突破力」などと持て囃されてきた菅首相だが、その実態は、党内をまとめることもせず、全国調査で7割が賛成している選択的夫婦別姓の制度導入を後退させたのだ。これで「国民のために働く」とは、笑わせるではないか。

 メディアや政治評論家のなかには「菅首相は安倍前首相と違って極右的傾向がないからまだマシ」などという意見があるが、こんな調子では、菅政権でも同じように、戦前回帰や女性の人権の軽視がつづいていくのは確実だろう。

最終更新:2020.12.22 11:11

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