渡部建問題で橋下徹らのコメントは“性搾取・女性蔑視”容認だ!「世間は女性の人権と言うけど本人たちは…」「なんで断らなかった」

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『バイキングMORE』で被害者批判を展開した橋下氏


 いったい何だったのかという声が上がっているアンジャッシュ・渡部建の会見。渡部への批判が再燃する一方、なぜかワイドショーやネットでは「レポーターのほうがひどい」「渡部がかわいそう」「家族に謝ればいい話」「会見で謝罪する必要があったのか」「ここまで質問攻めにあわなければいけないのか」などと、渡部同情論も巻き起こっている。

 たしかに、レポーターの質問には首を傾げたくなるものも多数あったし、これが大手芸能事務所所属の芸能人だったらここまで追及されていないだろう。

 しかし、これは単なる不倫スキャンダルなどではなく、渡部建が複数の女性を性のはけ口としていたという、性的搾取・ハラスメント問題である。渡部が結婚しているか否かにかかわらず、渡部が批判されるのも活動を控えるのも当然だ。そして、まともな説明も反省もないまま、わずか半年でお笑い番組で(しかも恐らくは問題をネタにして)復帰するとなれば、その経緯について追及を受けるのも当たり前だ。

 結局、これが“単なる不倫スキャンダルではなく女性蔑視の問題”であるという認識が抜け落ちているから、こうした安易な同情論が生まれるのだ。

 それどころか最悪なのが、相手女性を責め、女性をモノ扱いする差別行為を肯定するような発言がまたぞろ見られることだ。たとえば、会見翌日4日放送の『バイキングMORE』(フジテレビ)に出演していた橋下徹・元大阪市長の発言などはその典型だろう。

 この日の『バイキング』では3時間近い番組時間のほとんどを使って渡部の会見を扱ったのだが、そのなかで橋下氏は相手女性について、「この女性たちは本当に傷ついているのか」「なんで断らなかったのか」「渡部さんと女性との間に暴力的なものや、彼が女性をだますようなことがあったのかが重要なのでは」などと繰り返し言及した。

 橋下氏は番組でまず、こう切り出した。

「女性は傷ついているんですか? そこはどうなんですか」
「渡部さんとのお付き合いのなかで、女性が本当に傷ついたんだったら、第三者の僕が言うことじゃないんですけれども、渡部さんがしっかり対応すればいい話なんですけれど。なんか女性がものすごい傷ついて傷ついて傷ついて、世間的には女性の人権とかどうのこうの言うんですけど、本人たちはそういう意識なんですか。」

 こうした橋下氏の発言に対して、渡部の会見にも出席した芸能レポーターの島田薫氏が「渡部さんが言うには合意のもとだったというので、もし傷ついていたとしたら渡部さんは気づいていない」と解説すると、橋下氏は「合意」という言葉に食いつくようにこう話した。

「いちばん報じなきゃいけないのはその部分でね。女性が、わかんないですよ、わかんないですけど、渡部さんとのそういう関係のなかで、いろんな状況のなかで、ある程度納得して、合意してっていうんだったら、そこはしっかり言わなきゃいけないし、傷ついているんだったら、傷ついている。なんかそこを曖昧にして。なんかこの対応のところだけを。アンフェア。」

橋下徹が被害女性について「なんで断らなかったんですか?」

 その後も橋下氏の唖然とするような発言は続く。MCの坂上忍やコメンテーターとして出演していた元「週刊文春」記者の中村竜太郎氏が、モノ扱いされたことを女性は不快に思っていたと返すと、今度はこんなことを言い出した。

「なんで断らなかったんですか? 付き合いを。この現代社会においてね、女性と男性をこれから同等にっていうことのなかで、いま僕らは一生懸命努力して。昔の時代なら断りにくいようなこともあったと思うんですけど、いまの時代、そうではないと思うんです」

 その後も、同様の主張を何度も語っていた。

「事実をもうちょっとフェアに伝えもらいたいと思うのは、やっぱり女性のところで、女性は本当に傷ついて、渡部さんが本当に傷つけて、何か騙したとかなんとかだったら、これは報じて、渡部さんにもそれなりの対応してもらわなければいけないけれども。そうじゃない事実があるんだったら、世間の受け取り方も違うと思うんですよ。僕は、やっぱり裁判でずっと仕事をしてきたから、これはフェアじゃない。渡部さん、防御権を行使しないと。事実については、もうちょっとね、謝るところはしっかり謝らなきゃいけないんだけど、やっぱり女性との関係は、事実が出てくれば、見え方も感じ取り方も世間違うと思うんで。弁護士つけてやってもいいと思うし。そこは文春自身が報道機関という気概・矜持があるんだったら、しっかりそこは伝えてもらいたいと思うんですけど」

「今回の男女の問題っていうのは基本的に犯罪行為でもなければ、渡部さんが騙したり傷つけたり何かやった場合には、徹底的に報じてね、僕らこういう立場で仕事している以上は、そこは報じる必要があると思うんですけれども。そうじゃない限りは、本来は当事者の問題じゃないですか。でもだからこそ一番問題なのは、渡部さんとその女性との関係、その行為が、何か暴力的なことがあったのか」

 橋下氏は「女性は本当に傷ついていたのか」「何か暴力的なことや騙したとかあったのか」と遠回しな物言いをしているが、暴力的なことや騙したとかがないのであれば、渡部が一方的に責められることはないと言っているのだ。

 また、橋下氏は「なんで断らなかったのか」「いまの時代、断にくいなんてことはない」とも話していたが、これもあの卑劣な“性のはけ口”扱いが合意・納得のもと行われた可能性が高いことを示唆したうえ、それなら問題ないと言っているに等しい。

橋下徹の発言は力関係を無視した差別者擁護 想起される大阪市長時代の慰安婦発言

 まったく悪質というほかはない。橋下氏のこうした発言は一見、冷静で客観的にみえるが、現実の支配関係、権力関係を棚に上げた強者、差別者擁護の論理そのものだからだ。

 今回の相手女性は、渡部から精神的に愛されているわけではないのはもちろん、性的にもトイレという場所で一方的サービスを強いられている。そんな関係を自分から望んでいるわけがない。
 
 彼女たちが渡部に言われるまま会いに行っていたのは、「有名人」で「売れっ子」である渡部に精神的に支配されていたからだろう。

 男女関係や恋愛で一方的なマウント構造、支配関係に陥ると、被支配者のポジションにある人間はその理不尽極まりない行為すら受け入れてしまう。しかも、こうした支配関係が一旦できてしまうと、その関係から逃れること自体が難しくなる。恋人や夫にモラハラやDVなど酷い目に遭わせられながら離れられない女性が数多くいるのも、そのためだ。

 こうした関係においては、表面的な「納得」や「合意」があっても、それは本当の「納得」や「合意」とは到底言えるものではなく、たんに逆らえなくなっているにすぎない。

 これは、性的な関係や婚姻関係だけではない。学校でのいじめ、ブラック企業やパワハラ、カルト宗教の洗脳なども同じだ。当事者でなければ、「そんな会社、辞めればいい」とか「断ればいい」「休めばいい」「逃げればいい」「死ぬようなことじゃない」とかいくらでも冷静な意見は言えるが、こうした悪辣な相手に支配されたら人は簡単に「それだけのこと」ができない精神状態に追い込まれ、ときには命に関わる事態にまでなってしまう。

 そういう意味では、渡部の相手をさせられた女性たちを「なんで断らなかったのか」「誘いに乗ったほうが悪い」などと責めるのは、いじめやブラック企業、カルト宗教を肯定するのと同じと言っていいだろう。

 今回の橋下氏の発言もまさにそうだ。表面上の「納得」や「合意」があるかどうかを盾に、被害にあった女性たちの問題に還元することで、女性をモノ扱いする行動を肯定するものでしかない。

 橋下氏は大阪市長時代の2013年に日本軍の従軍慰安婦について「慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」「日本軍だけでなく、いろんな国が慰安婦制度を持っていた」と発言し、さらに沖縄の在日米軍にも「もっと風ぞく業を活用して欲しい」と進言し、国際的な大問題にまでなったことがある。

 これは、慰安婦や風ぞく業を仕事にしている女性なら性のはけ口にしてもかまわないという明らかな性搾取肯定、女性蔑視発言だったが、今回の発言もこうした考え方の延長線上に出てきたものではないのか。

 実際、橋下氏はこの日の『バイキング』でも、渡部が「デートクラブのように遊べる子だと紹介された」と語っていたことについて、「そういうグループだったんでしょ」「そういうおつきあいやっているような人たちもいる」などと、したり顔で語っていた。

武井壮、ブラマヨ吉田、指原莉乃、ゆきぽよも渡部でなく相手の女性を攻撃

 しかし、渡部問題の本質が女性蔑視・ハラスメントであることを理解せず、逆に女性差別に加担しているのは、橋下氏だけではない。

 ネットでは被害女性を非難・攻撃し、橋下氏の発言に同調する意見も多数寄せられた。

〈さすが橋下さん。 女性側はどう思て渡部と遊んでたの?という一番言うて欲しいこと言うてくれた〉
〈橋下さんの指摘はナイスです。女性の気持ちや文春から金もらって証言したとかなどを追求すべきだと私も同感でさす。確かに渡部は悪いが同意なら男女感は問題ないということは、もっと公開すべきだと感じます。〉
〈橋下さんの言う通りだと思います。 渡部さんなりにも言いたい事はあると思います。 女性側は女性という事。 一般人である事。 というのを盾にしてる所がありますよね〉。

 また、問題発覚当初から、相手女性の非を攻撃するような発言をする有名人も数多くいた。たとえば、武井壮はツイッターでこうつぶやいていた。

〈不倫男を擁護するつもりはまるでないが、それをペラペラ喋る女性にも辟易としている。妻帯者と知って不貞を働いたなら被害者ではなく加害者であって、それを雑誌やマスコミに喋って唯一の被害者である相手の妻や子供に二児的な損害と甚大な精神的社会的ダメージを与える低俗な行為だと認識するべきだよ〉(6月10日)
〈不倫に関する被害者を無視した『加害者側からの暴露』が報じられることに関して強い違和感を示したくて呟きました。。人との性行為を第三者に話すなんて下劣な行為が当たり前な世の中なんてまっぴらごめんなんだよ。〉(6月11日)

「不倫男を擁護するつもりはまるでないが」とエクスキューズをつけているが、明らかに相手女性だけを激しく非難している。むしろ、性行為を暴露した“加害者”とまで糾弾したのだ。

 普段からミソジニー丸出しのブラックマヨネーズの吉田敬も、6月15日放送『バイキング』(フジテレビ)で、渡部については多目的トイレを使用したこと以外なんとも思わないと豪語し、それより「雑誌社に売った女」などと、相手女性を非難していた。

 相手女性への非難は同じ女性からも出た。日頃からオヤジ権力者を内面化した発言で知られる指原莉乃は6月14日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)で、「何度も呼ぶのもバカ」としつつも、「結婚しているってすでに皆が知っている人から呼び出されて何度も行くのもバカ」と、どっちもどっち扱い。

 モデルのゆきぽよも、6月14日放送の『サンデージャポン』(TBS)で、「渡部さんも悪いことをしたし、みんなが凄く怒るなって。ゆきも怒ってるんだけど」と前置きしつつ、「不倫相手の女性が被害者ヅラをしてるじゃないですか」「不倫相手の女性も奥さんがいるってことを知ってて関係を何度も持ってたんだから、奥さんからしたらあなたも被害者ヅラしてんじゃねえって思う」と相手女性のことを激しく非難していた。

問題の本質を無視の渡部建騒動、早すぎる復帰の裏にテレビ局と芸能界の差別体質

 繰り返すが、渡部のしたことは不倫や恋愛などではなく、女性たちを自身の“性のはけ口”として蹂躙した最悪の行為だ。力関係を利用したハラスメントやいじめに近い。にもかかわらず、彼らはその相手をさせられただけの被害者と言ってもいい女性を叩いているのである。

 しかも、今回の問題の本質である性差別やハラスメントへの視点がないという意味では、渡部を叩いていたワイドショーやネットも同様だ。「不倫」や「多目的トイレの使用」については激しく批判していたが、女性をモノ扱いしたことを批判するものはほとんどなかった。

 実は渡部自身もそうだ。問題になったあとも妻や相方、スポンサー・仕事関係者には謝罪したが、相手の女性たちについては「週刊文春」のインタビューで「デートクラブのように安全に遊べる子たち」「彼女たちは接待で政治家や力士やプロ野球選手の集まりに行ったりしている」などと語っていた。

 そして、このように問題の本質が完全に無視されたままバカ騒ぎだけが繰り広げられた結果、安易な復帰の動きが進行し始めたのだ。『ガキ使』などというお笑い番組で渡部を復帰させようというのは、女性へのハラスメントだったという意識が全くないことの証拠だろう。

 そういう意味では、渡部をめぐる今回の騒動は、日本の芸能界、そしてテレビ局の女性蔑視体質を浮き彫りにしたともいえる。私たちは「不倫」などというものにバカ騒ぎする前に、そのことをまず追及すべきではないか。

最終更新:2020.12.15 07:51

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