美輪明宏がNHKで「『芸能人が政治に口を挟むな』なんて時代遅れ」 過去には安倍政権と支持者を「自分が戦地に行け」と一喝

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『おはよう日本』で「芸能人の政治的発言」について語った美輪明宏


 めずらしいことに、NHKが芸能人の政治的発言について取り上げた。17日放送の『おはよう日本』が「#検察庁法改正案に抗議します」に芸能人を多数参加したことをあらためて振り返り、世良公則、りゅうちぇる、美輪明宏の3人に「芸能人の政治的発言」問題についてインタビューしたのだ。

 世良は自らも参加した「#検察庁法改正案に抗議します」について「今度のことで、若者たちの人生や生きていることとか存在に、社会が直結して、なおかつ政治が直結しているってことを、ちゃんと理解できたんじゃないかなと思うんですよね」と振り返り、沖縄や多様性をめぐる問題などについて発言してきたりゅうちぇるは「日本という国に生まれてこれからここの国で生きていく。そんな中で自分の発言で何か変わるかもしれない。何か変わるきっかけになるかもしれない。この問題について知る若者が増えるきっかけになるかもしれない。そういう興味があるのであれば、調べてでも僕は、やっぱり発信していきたい」とあらためて宣言。

 なかでも、強く印象に残ったのは、やはり美輪明宏だった。美輪は戦後の言論状況について、「1960年あたりが一番盛んになりますよね。いろんな自分の思想とか、そういうものを作詞作曲して歌うようになりましたでしょ」とふりかえったうえで、こう語ったのだ。

「フォークの時代もそうだったけど。少しずつ少しずつ進化して、芸能人の人たちも、いろんなことを臆することなく意見を述べるようになったということで、『結構なこと』だと思いますよ。ただね、芸能人、芸能人とおっしゃるけど、それがもう差別化しているということなんですよ」
「『芸能人のくせに生意気だ』とか『芸能人が政治に口を挟むなんて』なんていうのは、もう時代遅れですよね」

 戦後の言論状況、とくにアーティストが社会運動に参加していた60年代を知る美輪にとっては、芸能人の政治的発言が是か否かなんて、「今さら何を言っているのか」というレベルの話なのだろう。

 実際、美輪自身はいまも政治的発言、政権批判を全く躊躇していない。安倍政権が集団的自衛権を容認し、安保法制を成立させようとしていた2015年には、ジャーナリスト・青木理との対談でこうした動きを徹底批判し、「安倍首相も自民党に投票した人もまず自分が戦地に行きなさい」と一喝したこともある。

 本サイトでは、当時、美輪の詳しい発言内容を記事にしている。問題は、芸能人の政治的発言の是非などではなく、メディアも含めてそれぞれがどう権力と対峙するのかであることを認識してもらうためにも、この記事を再録するので、ぜひ読んでもらいたい。
(編集部)

美輪明宏「安倍さんも麻生さんも自分が鉄砲をかついで第一線に行っていただく」

2015年7月13日、本サイトで、スタジオジブリの宮崎駿監督が、外国特派員協会主催の記者会見で、安倍政権を痛烈に批判したことをお伝えした。同じく高畑勲監督もまた安保法制と改憲への動きに強い懸念を表明しているスタジオジブリだが、そんなジブリが無料で配布している小冊子「熱風」の2015年8月号で、ある人物が舌鋒鋭く安倍首相をこき下ろしていることは、まだあまり知られていないだろう。

 その人物とは、ジブリ作品にも声優として参加している、あの、美輪明宏だ。「熱風」で始まったジャーナリスト・青木理氏によるインタビュー連載で、第一回のゲストとして登場。「戦後70年」をキーワードにするこの対談のなかで、美輪は安倍首相らにこんな提言をしている。

「(人間は)失敗を繰り返してばかりいる。安倍さんや、石破(茂)さんや、麻生(太郎)さんにしても、みなさん、言い出しっぺの責任を取っていただいて、徴兵制になるならば、まずご自分が、年齢に関係なく、鉄砲を担いで、鉄兜をかぶって、まず第一線に出ていただく。それから、お子さんも、孫も、きょうだいも、それから娘さんのボーイフレンドも、全部一緒に連れ立って第一線に、まず最初に出ていただく。もちろん一兵卒でね」

 それほど戦争がしたいのならば、首相自ら親族も含めてお手本を見せてもらいましょう──記事を通読すれば、これは冗談でも皮肉でもなく、美輪の本気だということがわかる。ある年代より下の人たちからしてみると、あの紅花色の髪色と『オーラの泉』などでの“スピリチュアル”イメージが強いだろうが、今年80歳になった美輪は、長崎で原爆にも被爆している戦争体験者である。青木氏との対談のなかでは、むしろ冷徹なまでの口調で安倍政権の本質をえぐり、安保法制について、自身の戦争体験談を交えながら分析する。

「私は笑ってますね。学習能力がないということでしょう。第二次大戦と同じ。歴史に学んでいないんです。
 日本は、実は戦争ができない国、不可能な国です。大正10(1921)年に暗殺された原敬が言っていたように、日本には何の資源もない。石油も鉄もニッケルも、何も採れない。食料自給率もいまや40%を切って、ほとんど輸入に頼っている」

「とにかく知力が足りないんです。あるのはやまいだれの方の『痴力』。それと情念。それだけ」

「自衛隊の後方支援って米軍の兵站でしょ」「原発狙われたら一巻の終わり」

 美輪は、太平洋戦争は“横綱に赤ん坊が戦いを挑んだようなもの”として、日本が「知力が足りない」為政者によって、いかに無謀な戦争へと突き進んでいったか強調した上で、安倍首相が「またそれと同じようなことをやろうとしている」と言うのだ。そして、“現在の日本は世界最強のアメリカの手先になろうとしている”と指摘する青木氏に対し、こう返す。

「そんなに甘く考えたら大間違いですよ。だって、アメリカ国債を世界で一番持っているのは日本だったけれど、それが追い抜かれちゃって、中国が世界一になった。最近、中国がちょっと景気減速して日本がまた抜き返したけれど、それでも中国はアメリカ国債を大量に保有しています。アメリカ経済をガタガタにしようと思ったらできる。なのになんでアメリカが日本だけの味方をしてくれます? 甘いですよ」

 さらに、安倍首相が安保法制で法制化させようとする自衛隊による後方支援については、「要するに兵站でしょう」「その兵站を叩くのは戦争の常識です。そこらへんのシビアさというのは、戦時中の人間でないとわかりません。戦争ってそれぐらい卑劣なものですから」と断じて、さらにこう畳み掛けるのだ。

「もうひとつ、日本は(戦争を不可能にする)抑止力を自分たちで作っちゃったんです。原発です。日本の沿岸をなぞるように50数カ所も原発を作っちゃった。今は特攻隊の時代じゃない。ミサイルや無人爆撃機の時代です。原発を狙われたら一巻の終わり」

 美輪は、安倍首相が防衛力増強の重要性を語りながら、その一方で国防上の弱点である原発という“爆弾”を維持し続けているという矛盾を鋭く指摘。そして手厳しい批判を、安倍政権だけでなく、選挙で与党に票を投じた人々にも投げかけるのだ。冒頭に引用した“安倍首相とその家族自らが先に戦地へ行け”という発言は、こう続く。

「それから、それに賛成している選挙民の人たちも、ご自分が支持して選んだんだから、選挙民もまず一家を挙げて、どうぞ出征してくださいって。男の方たちは、ご自分が殺し、殺されにいきたいんでしょ。どうぞ、いらしてください。それだけですよ」

 そこで青木氏が、こうした国民に対して伝えたいことはなにか?と訊いても、「別にないですね。そのときにならなければ人間というのはわからないんです」と冷たく言い放つのだ。

2014年衆院選の時点で安倍政権の危険性に警鐘を鳴らしていた美輪明宏

 美輪がここまで国民の責を問うのにはわけがある。たしかに安倍自民党は、先の衆院選でアベノミクスによる経済成長を掲げて議席を守った。しかし美輪は、安倍政権の真の狙いが安保法制であることを早くから見抜き、メディアを使って発信してきた。たとえば衆院選の直前、スポーツニッポンのインタビューではこう語っている。

「国民は経済問題ばかりに目を奪われてはいけません。実はその裏に日本の将来を揺るがしかねない重要な争点が隠されているのです。それは、『集団的自衛権』行使の問題です。(略)きっと首相は、国会で自分の都合よく安保関連法案を通すためには、この時期に選挙をしておくのが最も良いタイミングと判断したのでしょう。(略)ここで再び衆議院で安定多数の議席を確保しておけば、「国民からの信任を得た」と、任期の向こう4年間、首相はやりたい放題好き勝手に、きな臭い「積極的平和主義」とやらを進められると踏んだに違いありません。(略)
 いつの時代も犠牲を強いられるのは、弱い立場の人間なのです。こういう世の中で果たしていいのでしょうか。そういう流れを止めるのも、有権者みなさんの大切な1票に他なりません。よくお考えになり、投票所に足をお運び下さい。日本の未来を良くするも悪くするもあなたの責任なのですから」(「スポニチアネックス」14年12月12日)

 少なくともあのとき、国民は安倍政権の本質を見抜いていなければならなかったのだ。いち早く安倍政権が目指す「戦争のできる国」に抗ってきた美輪明宏だからこそ、忸怩たる思いで「殺し、殺されに行け」と強い言葉を投げかけるのだろう。

 美輪が言うように、「そのとき」になるまで、われわれは過ちに気がつけないのか。現在の安倍政権は、誰がどう見ても、完全に“暴走状態”に突入している。そんななか、われわれにできることはなにか。ひとつは、国民の声で安倍政権の支持率をさらに下げ、解散に追い込み、次なる選挙で自民党にだけは投票しないようにすることだが──。

最終更新:2020.07.19 01:23

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