大坂なおみが黒人差別抗議でキレキレ発言! トランプ御用キャスターらの「アスリートは政治に口出すな」圧力にも敢然と反論

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大坂なおみが黒人差別抗議でキレキレ発言! トランプ御用キャスターらの「アスリートは政治に口出すな」圧力にも敢然と反論の画像1
大坂なおみTwitter


 プロテニス選手の大坂なおみが、人種差別抗議デモをめぐってSNSでキレキレの発信をし続けている。

 今週末に大阪で行われる「BLACK LIVES MATTER」デモへの参加を呼びかけ、「政治にスポーツを持ち込むな」というクソリプやトランプ支持者のイチャモンにも敢然と反論している。

 ミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系男性ジョージ・フロイトさんが警察官に殺害された事件に端を発し、全米各地で広がる黒人差別への抗議デモ。多くのアーティストやスポーツ選手らもSNSで差別への抗議と、運動への連帯の声をあげているが、大坂なおみ選手もそのひとりだ。

 5月30日に〈あなたに起こっていないからといって、まったく起こっていないということではありません(Just because it isn’t happening to you doesn’t mean it isn’t happening at all.)〉とツイートしたことや、6月2日の「Blackout Tuesday」に真っ黒の画面を投稿したことなどは、すでに日本の報道でも報じられているが、それだけではない。

 たとえば6月1日には、抗議中の男性が、警察から撃たれる催涙ガス弾を片っ端からテニスラケットで打ち返す動画に、〈OK、許す!(Undestood.)〉というコメントをつけ拡散。抗議デモへの連帯と警察の暴挙への怒りを、ユーモアも交えて端的に表現してみせた。

 さらには〈ナオミもLAで抗議に参加してくれた!ホント大大大ファンになっちゃう!〉というツイートに〈今日は、みんなどこに飛び出すの? 教えてください(Where’s everyone popping out today tho? Let me know)〉と返し、大坂選手自身の抗議デモ参加もうかがわせた。

 また、K-POPファンたちが、白人至上主義者たちの差別投稿に対し、BTSやBLACKPINKの画像や動画で埋め尽くしたムーブメントにも、「いいね!」した。

 ジョージ・フロイドさんが警察に殺害されて以降、大坂選手はずっとこの問題について発信し続けている。この間の大坂選手のツイートは、彼女の知性とセンスを感じさせるユーモアを交えながらも、その言葉には強い怒りと切実さがハッキリと込められている。

 しかも、大坂選手は差別そのものに怒っているのはもちろん、差別に対していまもまだ多くの人が沈黙していること、さらに多くの人が大坂選手に沈黙を強いてくることにも、違和感を表明している。

 たとえば、恋人と報じられたこともあるラッパー・YBNコーディの〈もはや沈黙は裏切りだ(there comes a time when silence is betryal)〉という投稿をリツイート(5月29日)。さらに普段黒人カルチャーに親しんでいるはずの人たちが、差別に対して沈黙していることに、こんなふうに皮肉たっぷりに疑問を呈した。

〈チェーンをつけたり、ジムでヒップホップ気取ったり、グータッチしようとしたり、スラングでおしゃべりしたりしたがる人たちが、急に黙りこんじゃって、おかしいです(It’s funny to me that the people who wanna wear chains, blast hip hop in the gym, attempt to get dapped up, and talk in slang are suddenly quiet right now.)〉(5月30日)

 あるいは、6月3日投稿した画像には、こんな言葉が記されていた。

〈もしあなたが、先週何も発言しなかったのだとするなら、なぜなのか自分自身に問いかけてください。
もしあなたが、正義のために立ち上がることに自分のプラットフォームを使うことに居心地悪さを感じるなら、なぜなのか自分自身に問いかけてください。〉

日本の人たちにも「お願いします」と日本語で行動を呼びかけた大坂なおみ

 6月2日、音楽業界の呼びかけで行われた「Blackout Tuesday」。世界中で多くの著名人が真っ黒な画像をアップし大きな話題になったが、一方で真っ黒な画像をアップするだけでなくもっと明確に発言するべきなどの異論を唱える著名人もいた。

 上述のとおり大坂なおみ選手もこの日、真っ黒な画像をアップしていたが、同時にその複雑な思いを明かしていた。

〈この1週間の間に黒い正方形を投稿しただけの人たちをこきおろしたい気持ちと、それとも、彼らは黒い正方形すらも投稿しないということもできたけどごくわずかのパンのかけらを与えてくれたと受け取るべきなのか、その狭間で揺れ動いている(I’m torn between roasting people for only posting the black square this entire week...Or, accepting that they could’ve posted nothing at all so I should deal with this bare minimum bread crumb they have given.)〉

 実は大坂選手がアップした黒い画像はただ黒いだけの画像ではなかった。1点目は真っ黒の画面の下部に「BLACK LIVES MATTER」という文字の入った画像。さらに3点の画像を同時にアップしており、それらには黒地に白い文字で、「NAACP(全米黒人地位向上協会)」「Color Of Change」などフォローすべき団体のアカウントのリストや、ミネソタ州検察などメッセージを届けるべき電話番号やメールアドレスのリスト、サインしてほしい署名リストが書かれていた。

 大坂選手は、差別をなくすために、もっと多くの人に発言してほしい、動いてほしいと切実に願っている。

 その思いは、日本に住む人に対しても発信されている。7日に大阪でも人種差別反対デモが行われるのだが、大坂選手はこの告知をリツイート。大坂選手のツイートは基本的に英語だが、この告知にだけはわざわざ日本語で〈お願いします〉と添えた。大坂選手は日本の人たちにも関心を持って動いてほしいと願っている。

 ちなみに今日は、この大阪でのデモに対する攻撃にも反撃している。「ここ大阪での馬鹿げたBLM、黙れクソって言いに行ってやる」と日本在住をなりすました英語での投稿には、大坂選手は「なんで日本語じゃないの? いつ違う国に引っ越したの? レイシズムがダダ漏れだから、隠したほうがいいよ」とピシャリ。「日本にも黒人がいたんだ笑 誰が資金を出してオーガナイズしたのか興味深いな」などという陰謀論には、大坂選手自身のしかめっ面のGIF画像を投稿した。この大阪でのデモに寄せる大坂選手の思いの強さが、感じられる。

大坂なおみは差別主義者やネトウヨのクソリプにも敢然と反論

 抗議デモに一部暴力行為が紛れ込んでいたことだけをあげつらい、攻撃してくる人たちにも、大坂なおみはけっしてひるんでいない。逆に、デモを攻撃し警察によるジョージさん殺害はスルーするその卑劣さをこうツイートした。

〈そろそろ、なんの武器も持たない黒人男性の死についてツイートしないのに、略奪についてツイートする頃ね(When you tweet about the lootings before you tweet about the death of an unarmed black man)〉
〈事件が起きて1週間ゴーストになったみたいに沈黙していた人たちが、略奪が始まったとたん、毎時間くらいの勢いでツイートし始めた(I see people been ghost on twitter for a week when the events first started unfolding, but as soon as the looting started they sure are quick to give us hourly updates on how they’re feeling once again)〉

大坂選手に対しては、例によって日米のネトウヨが絡み続けているが、差別主義者やネトウヨのクソリプにもこう敢然と反論している。

「お前なに?隠された差別すらないよ(You people? Not even undercover racism.)」とアフリカ系に対する差別表現まじりのツイートに対して、〈お悔やみ申し上げます。字が読めないのは大変ですね(My condolences to you. I know it must be hard to be illiterate)〉と皮肉たっぷりに返信。

 さらに、「スポーツ選手は政治発言をするな」と沈黙を強いられることにも大坂選手は強く憤っている。

「スポーツと政治を混ぜるな(Sports and politics do not mix)」というリプに対して、大坂選手は〈魚があなたのこと食べちゃえばいいのに(I hope that fish eats you.)〉と切って捨てた。ちなみにこのクソリプを送りつけてきたアカウントのプロフィール写真の男性の横には、人間大の大きな魚が写っている。

「政治に口出すな」に「なぜ私はダメであなたには発言する権利があるのか?」

 大坂選手が批判するのは、ネトウヨだけではない。著名なキャスターにも遠慮なく切り込む。FOXニュースのキャスターであるローラ・イングラハムが、2018年にトランプ批判をしたバスケットボール選手のレブロン・ジェイムズとケビン・デュラントに対し、「黙って、ドリブルしとけ」と発言する場面を報じるツイートをリツイート。

 イングラハムはトランプ寄りとされるFOXのなかでも、筋金入りのトランプ支持者でトランプからも賞賛される御用キャスターであり、移民差別発言や銃乱射被害者を揶揄する発言などでも批判を浴びたことがある人物。

 大坂選手は、イングラハムが2016年にトランプの大統領選キャンペーン集会に登場し、トランプに向かってナチス式敬礼をしたのではないかと物議を醸した場面の画像をアップし、「これ、あなただよね?」と投稿したうえで、こうきっぱりとツイートした。

〈アスリートは政治に口出しすべきじゃない、ただみんなを楽しませてればいい、と多くの人が口々に言うのが大っ嫌いです。まず第1に、これは人間の権利の問題です。それに、なぜ私はダメであなたには発言する権利があるんですか? その論理でいくと、IKEAで働いている人はグローンリード(IKEAのソファ)のことしか話しちゃいけないってことになりますよ(I hate when random people say athletes shouldn’t get involved with politics and just entertain. Firstly, this is a human rights issue. Secondly, what gives you more right to speak than me? By that logic if you work at IKEA you are only allowed to talk about the “GRÖNLID”)〉

 このツイートには、アメリカだけでなく日本のネトウヨも多数絡んでいる。わざわざ英語で例の「ALL MATTER LIVES(すべての命が大切)」だの、「ウイグルやチベットのことを考えろ」だの、「コロナの最中にデモ参加を呼びかけて日本人の命を危険に晒している」だの……。「Naomi chan」と、マンスプレイニングよろしくあえて“女子ども”扱いするように呼びかけるものも複数散見される。

 恥を知れとしか言いようがない。大坂選手がどれだけの強い怒りと切実さで発信しているか、わからないのか。

メディアが大坂選手を「日本人らしい謙虚さ」のイメージに押し込んできた

 日本のメディアでは、大坂選手について「日本人らしい謙虚さ」「日本の心」などと強調されることが多い。しかしそれは多様なバックグラウンドを持つ大坂選手の、ほんの一面にすぎない。周知のとおり、大坂選手は日本人の母とハイチ出身の父の間に生まれ、アフリカ系のルーツも持ち、アメリカで育った。日本でもアメリカでも多くの差別に晒されてきたことも想像に難くない。差別に憤り、ときに激しい言葉も使いながら発言するのは当然だし、それも大坂選手の魅力だろう。

 ところが、日本では大坂選手の怒りがきちんと伝えられていない。テニスは強いけど、控え目で自分の意思で発言したりしない、ただ自分たちの「日本スゴイ」を満たしてくれる。そんな都合のいい存在に押し込んでおきたいのではないか。

 以前、日清のアニメCMで描かれた大坂選手の肌がホワイトウォッシュされており問題になったときもそうだった。このとき、大坂選手は今回のように怒りはしていないが、実際はこのCMについて不適切との認識を示していたにもかかわらず、複数のメディアが誤訳とミスリードによって「気にしていない」「なぜ騒いでいるかわからない」などと報じた。

 ネトウヨに限らずメディアにも、差別について怒ったり、発言してほしくないという潜在的な願望があるのだろう。それが「賢い大人の対応」とも思い込んでいる。

しかし、大坂選手はちがう。理不尽な差別や人権侵害には、こうして毅然と声をあげる、それがほんとうの彼女なのだ。しかも、その言葉からは激しさだけでなく、知性とユーモア、そして史上最高年収を手にした女性アスリートにまでなった者としての、社会的責任感さえ感じる。

 大坂選手のエージェントであるIMGのスチュアート・ドゥグッド氏はニューヨーク・タイムズの取材に対し、以前こう語っていた。

「15年後の未来を想像したとき、彼女はグランドスラムのタイトルをいくつも獲るようなテニス選手として素晴らしいキャリアを築いていると思う」
「でもそれだけではない。彼女は、日本で多様な人種の文化が受け入れられるように変えてくれるだろう。彼女が後に続く人たちのための扉を開いてくれたこと、それは単にテニスやスポーツだけのことではなく、社会のすべての人々のためのものであることを願っている。彼女はそういう変革のアンバサダーになれると思う」(2019年8月23日)

 わたしたちは、いまこそ大坂なおみ選手の発信を受け止め、黒人差別に抗議の声をあげるとともに、自らの社会の差別と排他性を省みるべきだろう。

最終更新:2020.06.06 12:15

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