玉川徹が原発汚染水“海洋放出”論に真っ向反論!「原発事故は起こらないって言ってた専門家がまた無責任なことを」

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テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』番組サイトより


 福島第一原発のトリチウムを含んだ汚染水の海洋放出問題。汚染水対策を担当する経産省の課長級職員が、自身のFacebookに「廃炉に責任を負ってない人はピーチクパーチク言えるけどねえ、笑」と投稿したことが波紋を広げている。経産省は「国家公務員の信用を失墜させる行為」として4日、当該職員の懲戒処分を発表し火消しに走っているが、これは、いかに政府が汚染水問題を軽視しているかの表れだろう。

 汚染水をめぐっては、原田義昭・前環境相が退任直前に「原発の処理水は思い切って放出して(海に)放出して希釈しか方法はない」と発言。さらに、松井一郎・大阪市長が「海の環境や人体に影響ない、ただの水」「政府が科学的根拠を示して海洋放出する決断をすべき」などと言って条件付き大阪湾で受け入れる可能性を表明、政府を援護射撃するなど、安倍政権は汚染水の海洋放出をまるで決定事項かのように誘導している。

 ところが、汚染水と海洋放出の危険性に正面から切り込むマスコミはほとんどない。それどころか、安倍政権にならって汚染水を「処理水」と言い換え、原子力ムラが主張する「トリチウムは無害」という“安全神話”を垂れ流すという忖度がまかり通っている状態だ。

 そんななか、少し前、汚染水問題に果敢に突っ込んだのが、9月25日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)だった。

 番組では、汚染水海洋放出を取り上げるコーナーで、“原子力ムラの御用学者”として知られる「放出賛成派」の澤田哲生・東京工業大学先導原子力研究所助教、そして、トリチウムの健康被害にも詳しい「放出反対派」の西尾正道・北海道がんセンター名誉院長がゲストとして出演。御用学者の澤田氏に対し、西尾氏と番組コメンテーターの玉川徹氏が、その矛盾や疑問を突くという大激論になったのだ。

 そもそも「汚染水」とは、原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れた冷却水や地下水のことで、高濃度の放射性物質を含む。この汚染水からセシウム、ストロンチウムなどの放射性物質を除去したうえで海への放流を検討しているわけだが、トリチウムだけは除去が不可能とされ、漁業関係者を中心に食の安全や健康被害などが懸念されている。

 一方、増え続ける汚染水を貯蔵するタンクを置く敷地はあと3年ほどで満杯になるとみられている。だからこそ安倍政権はいま、トリチウムの無毒性を強調し、海洋放出を正当化しようとしているわけだ。

 9月25日の『モーニングショー』でも、「放出賛成派」の澤田氏が政府の立場と同じく、「もともとトリチウムは自然界にもあるので濃度が自然に近ければ科学的には影響は出ない」「成分は水素と同じ」などと説明。さらに、「水は H2Oですがトリチウムが入ってくるとHTOになる、水と混じってるんですね。ですからH2OからHTOを分離するっていうのは可能じゃないですが、非常に手間とお金がかかっちゃう」などとして、除去しないで海洋放出するべきだと主張した。

 これに対して「放出反対派」の西尾氏は、「トリチウムは水素と同じ動きをするが、体内でたんぱく質や糖などとくっつくと排泄されず年単位で体内に残る可能性がある」と反論。その危険性をこう述べた。

「問題は(細胞の)核にまでしっかりとトリチウムは水素として入り込んでいるっていうことが証明されている。最後の核まで入ってそこで放射線を出す。核の中に二重らせん構造の遺伝子があります。4つアデニンとかシトシンだと4つの塩基で組み合わされてるんですけど、その4つの塩基が組み合わされている二重らせん構造っていうのは、実は水素結合力でつながっているんです。それがヘリウムに変わったら水素結合力なくなりますから、二重らせん構造そのものが壊れちゃう。放射線が出るだけじゃなくて二重らせん構造も壊れてしまう」

『モーニングショー』ではトリチウム、ストロンチウムなどの汚染物質含有も指摘された

 つまり、トリチウムが細胞の核に入り込み、内部被ばくを起こし、人間の根幹に関わる遺伝子にまで影響する可能性を指摘したのだ。

 さらに、コメンターターの玉川氏は、たとえば空気で冷やす方法など、汚染水自体をなくす方法を検討しない政府や東京電力に疑問を呈した。

「もう一つ大原則としては、これは原発の事故があったから生まれています。これ全部。(3.11まで)原発の事故は起こらないって言ってたんです、原発の専門家は、ほとんどがね。でも起こって。起こった後じゃあ、どうすんだって言ったとき、泥縄のように放出するしかないんだと。また無責任なこと言ってんの、っていうのは僕は心のなかにあります。本来は海洋に放出しないで済んでるはずのものを、海洋に放出するしかない。『これしかないんだからいいだろう』っていうふうなことは、謙虚さに欠けていると思うんです」

 まさに玉川氏の言うとおりだろう。「あり得ない」はずの原発事故が起き、汚染水がつくられてしまった。しかも事故から8年が経ったのに、他の仕組みを考えることなく汚染水を貯め続け、問題をずっと放置してきた。その挙句、「海洋放出しかない」とは思考停止であり無責任にもほどがあるだろう。

 西尾氏もまた、燃料デブリを箱状の壁で囲い、チェルノブイリのような石棺にして空冷するしか汚染水問題は解決しないと主張。さらに、汚染水にはトリチウムだけでなく、ストロンチウム、ヨウ素129、ルテニウムといった汚染物質が含まれていると指摘したのだ。

 実際、このことはすでに昨年8月22日の朝日新聞DIGITALでも報じられている。浄化されたはずの汚染水約89万トンのうち8割超にあたる約75万トンから、ストロンチウム90など基準値の約2万倍の汚染物質が検出されたことが明らかになっているのだ。しかも、これを東電は積極的に説明していなかった。

 しかし、こうした指摘に対して澤田氏は「箱にするっていうのは、ずっとコストがかかります。あと技術的にそれは、できるかどうかってこともあります」「(空冷は)お金かかりすぎて、どこかが負担しなきゃいけないんです。そのバランスをとらないといけない」と、コストを全面に出し原子力ムラの代弁を繰り返した。

玉川徹「電力会社も国も原発事故のコストだから金がかかるのを嫌がってる」

 澤田氏の“コスト重視論”に業を煮やした玉川氏が「お金はね、原発の事故のコストなんです」「でも、あんまりお金かけたくないんですよ、電力会社にしても国にしても」「原発って事故が起きたらこんなにお金がかかるじゃないか、ってなるのはそもそも嫌なんですよ」とその本質と原発ムラの本音を突く。さらに玉川氏は、政府や電力会社が石棺にしない理由として、「そうすると永遠に残るわけです、原発事故の跡が。そういうふうなことは原発をこれからも続けていくって国にとっては認められなかったんでしょうね」とも指摘した。だが、澤田氏は意に介さず、「トリチウムは自然界に多量にある」などと、繰り返し汚染水の安全性を強弁するのだった。

 この「トリチウムは自然界にもある」というのは、汚染水の海洋放出を正当化するために必ず持ち出される話だが、しかし、番組では西尾氏が猛反論。そのレトリックの欺瞞を徹底的に追及したのだ。

「(トリチウムが)自然界にあるっていうのもね、確かにあるんですけど、じゃあ原因は何なんだと言ったら大気中の核実験と原発稼働で垂れ流してるからなんですよ」
「自然界には当然(トリチウムが)できるんです。しかし1950年代に測定された値の1000倍の量が今、出てるんです、自然界に。その原因は大気中の核実験と原発から垂れ流しているトリチウムが原因なんです」

 これに対して澤田が、大気中のトリチウム増加は当時の核実験が原因で、福島第一原発の汚染水の中のトリチウムの量はそれよりもはるかに少ない、と反論するのだが、西尾はまったく譲らずに反駁した。

「そもそも核実験をやってない50年代から比べると増えている。1000倍に」
「例えばカナダなんかは原発周辺の健康被害が出たんで、飲料水は20ベクレルになっています。しかしなんで日本は6万ベクレルなんですか? 論外ですよ」

玉川徹「不安を持つのは当然」「科学が安全と言ってるからOKという話じゃない」

 このように両者の論戦がヒートアップしたところだったが、ここで司会の羽鳥慎一が間に入ってくる。そして、「トリチウムはエネルギーが弱いので皮膚の表面で止まり、普通の水と同じく尿などで排出されます。特定の臓器に蓄積しません。ということで健康への影響は確認されていない」という政府の見解を説明して、議論を強引にまとめようとした。だが、西尾氏はそれでも、「これは内部被曝をまったく考慮していない。核に取り組まれているってことが、多分わかってないわけですよ、論外ですよ」などと、最後まで汚染水放出の危険性と政府の欺瞞を強く批判したのだ。

「トリチウムに関してはしっかりとしたデータが出ているんです。垂れ流している原発の周辺ほどトリチウムの濃度が高いというデータもきちっと出ています。ですから、魚介類もそこら辺の近海でとったものは、トリチウムの入っている率は高いと考えなきゃいけない。決して風評被害ではありません。健康被害につながります」

 汚染水の海洋放出は安全か、危険か。最後まで2人の専門家の見解は完全に対立した。だが、逆に言えば、それだけ科学的見地から意見がまっぷたつに割れる問題にもかかわらず、いま、安倍政権周辺は「海洋放出しかない」というムードを無理やりつくりあげようとしているのだ。番組では、玉川氏がコーナーの最後をこう総括していた。

「不安っていうのは、不安があるからこそ人間は生き延びるんであって、その不安を取り除く方法を考えろって、それは無理な話で。事故の前に原発が動いていたとき、原発に対して不安を持ってる人なんて本当に少なかったですよ。なぜなら、原子力の専門家も政府も原発で事故起きないって言ってましたから。その結果として何が起きたか。皆さんご存知の通りのことが起きた」
「科学自体も途上のものだから、すべて信頼できるわけではない。大阪市長が『科学がいいって言ってるんだからOK だろう』っていうふうなことをおっしゃっても、それで不安が消えるかっていったら消えないですよ。科学自体に不安を持っている人もいるわけだから。今の現状で科学以外に頼るものはあるのかってたら、それはその通りですよ。その通りなんだけど、さっき言った安全と安心っていうのを、『安全なのに安心できないって言ってる連中はみんなバカ』って、僕はそういう話ではないと思います」

政府の意向に沿って、「汚染水」を「処理水」と言い換えるマスコミ

 たしかに、原発事故後の放射性物質や健康被害をめぐる「科学的根拠がない」という言葉は、一見、もっともらしく思えるが、実際には「現在の科学では結論が出ない」ということを意味しているに過ぎない。過去の薬害や公害問題を振り返ってもわかるが、たとえば、水俣病やイタイイタイ病の科学的原因がはっきりと分かったのは、被害が確認されてから何年も後のことだったし、公害認定にいたってはさらなる年月を要した。薬害エイズや子宮頸がんワクチンなどの問題も同様だ。だからこそ、適切に不安がることは大切なのだ。そう、玉川氏は主張したのである。

 いずれにしても、他の情報番組やニュース番組が汚染水問題に及び腰のなか、「放出賛成派」と「放出反対派」の専門家の論戦を通じ、正面から取り組んだ『モーニングショー』には拍手を送りたいが、しかし、気になったのは、その『モーニングショー』にしても、原発ムラの澤田氏はもちろんだが、司会の羽鳥や解説パネルなどでも「汚染水」のことを「処理水」と言い換えていたことだ。

 いま、新聞やテレビは、政府の意向に沿って、この原発汚染水を「処理水」と言い換えている。放射性物質の除去処理をする前と後で「汚染水」と「処理水」を呼び分けるというのが建前だが、しかし、前述したように、現在の処理ではトリチウムは除去できない。つまり、いくら政府やマスコミが「処理水」と呼んで「浄化された水」と言い張ろうが、その水は依然として放射性物質が含まれる「汚染水」なのだ。

 冒頭に述べたように、マスコミは汚染水報道でも様々な箇所で安倍政権を忖度している。とりわけテレビでは、3.11直後はあれだけなりを潜めていた“原発広告”が復活している。原発再稼働政策を推し進める安倍政権の発足と歩調を合わせるように、電力業界は広告費を増やし、再びマスコミを“カネ”で漬け込んでいるのだ。“原発タブー”は確実に復活しつつある。汚染水問題でマスコミが「海洋放出しか道はない」という風潮一色に染まりつつあるのも、まさにひとつの証明だろう。

 だからこそ、「政府が安全と言っているのを不安がるのはおかしい」「風評被害を助長させるのか」という圧力に屈さない態度が必要だ。政府と原子力ムラがつくりだした“安全神話”を鵜呑みにした結果が、3.11の原発事故ではなかったか。いずれにしても、大量の汚染水が海に垂れ流されてからでは遅すぎるのだ。

最終更新:2019.10.05 11:39

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