参院選終盤で自公維の改憲勢力3分の2超の可能性!「1回目の改憲ができれば、何回でもできる」と嘯く安倍側近

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自民党HPより


 ついに投開票日を迎えた参院選。消費増税、年金問題などさまざまな争点がある今回の選挙だが、もっとも重要なのは、この選挙で与党が圧勝すれば、安倍首相は確実に憲法改正に向けて大きく動き出すということだ。

 しかし、戦後日本の国のかたちを変えてしまう重要な問題であるというのに、この選挙戦においてメディアが憲法改正について大きく取り上げることはほとんどなかった。また、選挙終盤の情勢調査でも、「改憲勢力、3分の2割れか」(時事通信14日付)、「3分の2厳しく」(毎日新聞16日付)、「3分の2を割り込む可能性」(産経新聞16日付)といった調査結果が報じられたせいか、リベラル層からもこの選挙戦において憲法改正への強い危機感はあまり感じられない。

 だが、「改憲勢力」が3分の2を上回る可能性はけっして低いものではない。7月15日付けの日本経済新聞は、終盤の情勢調査結果として〈自民、公明両党は改選124議席の過半数63議席を超える勢い〉とし、日本維新の会なども含めた「改憲勢力」は〈非改選議席と合わせると国会発議に必要な3分の2に迫る〉と報道している。

 しかも、安倍官邸はすでに「改憲勢力」の新たな掘り起こしに着手。たとえば、改選数2の静岡選挙区では立憲民主党と国民民主党が唯一競合しているが、政治的影響力をもつスズキの鈴木修会長をはじめ、これまで選挙で自民党を支持してきた企業の一部が国民民主党所属で現職の榛葉賀津也候補の支援に回る事態が起こっているという。そして、この背景について、自民党関係者からはこんな証言が出ている。

「首相官邸からの依頼だ。(参院選後の)改憲を意識しているのだろう」(静岡新聞7月13日付)
「官邸が榛葉にてこ入れしている」(時事通信7月11日付)

 さらに、〈複数の関係者によると、榛葉と親しかった官房長官菅義偉が企業や公明の支持母体・創価学会に榛葉支持を働き掛けたという〉(同上・時事通信)ともいい、こう伝えている。

〈憲法改正に意欲を燃やす安倍は、参院選後も自公や日本維新の会などの改憲勢力で発議に必要な3分の2を維持することが難しいと認めている。このため、新たな改憲勢力を求めており、与野党から異口同音に「ほぼ自民」と呼ばれる榛葉は格好のターゲットと映っているとみられる。〉(同上・時事通信)

 つまり、安倍官邸は、非改選を含め「改憲勢力」が3分の2に届かなかった場合を想定した数合わせの戦略に出ており、「ギリギリで改憲勢力3分の2を阻止」する程度では、簡単に崩されてしまう可能性が高いのだ。

 そして、いちばん重大なのは、「改憲勢力」を3分の2以上にして安倍首相が一気に進めようとしている、その改憲の中身だ。

 2018年3月に自民党が提示した改憲項目は「自衛隊の明記」「緊急事態対応」「合区解消」「教育の充実」の4つだが、とりわけ現行憲法の平和主義を支える重要な9条に手を加える「自衛隊の明記」に対する危機感は、とてもじゃないが高まっているとは言い難い。そこには「9条の条文は維持するって言うし」「自衛隊を明記するくらいなら」という意識があるのではないか。

 しかし、それは完全な間違いだ。たしかに「憲法へ自衛隊を明記」とだけ聞くと、以前から自衛隊は合憲であると考える多くの人は大した改憲ではないと思うかもしれないが、実際には、これは日本国憲法の平和主義の息の根を止めようとするものなのだ。

自衛隊加憲で9条「戦争の永久放棄」「交戦権の否認」は死文化する

 自民党による「条文イメージ」(たたき台素案)では、現行の9条1項2項のあとに、「第九条の二」として、以下の条文が付け足されている。

〈前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。〉

 見てのとおり、これは現行9条第1項および2項の“例外規定”であって、永久放棄が謳われている《国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使》も、否認されている《国の交戦権》も、この「第九条その二」の挿入により死文化し、「必要な自衛措置」の名の下で認められることになるのである。

 さらに、この条文では「自衛の措置」について、政府が「国及び国民の安全を保つために必要」と判断すれば、いかなる軍事行動も可能となりうる。「第九条その二」の第2項は、自衛隊の行動について「国会の承認」がなくとも「その他の統制」によって決定されると解釈できるからだ。第二次安倍政権はそれまでの歴代政府解釈をひっくり返して集団的自衛権を行使可能とした。時の政治権力が「自衛の措置」の内容を恣意的に決めるということは、他ならぬ安倍首相が体現していることだ。

 このとおり、「自衛隊の明記」というより「戦争改憲」と呼ぶべきシロモノなのだが、この“騙し改憲案”を提案したのは安倍首相のブレーンであり日本会議常任理事で政策委員の伊藤哲夫・日本政策研究センター代表。そして、伊藤氏はこの「自衛隊明記」を加権するという改憲案の狙いを、日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」2016年9月号でこのように開陳している。

〈護憲派への徹底した「反転攻勢」を始めるべき〉
〈(加権は)護憲派にこちら側から揺さぶりをかけ、彼らに昨年のような大々的な「統一戦線」を容易には形成させないための積極戦略でもある、ということなのだ〉
〈(平和、人権、民主主義には)一切触れず、ただ憲法に不足しているところを補うだけの憲法修正=つまり「加憲」なら、反対する理由はないではないか、と逆に問いかけるのだ〉

 さらに、伊藤氏がこの“戦略的加憲論”を展開した「明日への選択」の翌々月号では、日本政策研究センター研究部長の小坂実氏がこうも書いている。

〈「戦力」の保持を禁じ、自衛隊の能力を不当に縛っている九条二項は、今や国家国民の生存を妨げる障害物と化したと言っても過言ではない。速やかに九条二項を削除するか、あるいは自衛隊を明記した第三項を加えて二項を空文化させるべきである〉

 加権の狙いは“護憲派の分断”と“9条の死文化”──。ようするに、本来、安倍首相や日本会議が悲願とする戦前回帰の改憲では国民の支持が得られないから、まずはソフトな「加憲」で改憲のハードルを下げようというのである。

安倍御用・百地章は「まずは自衛隊明記、その後に自衛隊を軍隊に発展させる」

 そして、安倍首相をはじめとする改憲派のさらなる狙いは、まずは一度、憲法改正を実現させて、そのあとに本丸へと切り込もうというものだ。

 実際、安倍首相の側近議員も、その「戦略」を語っている。

 それは、2018年1月に櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」が開催した月例研究会でのこと。「憲法改正を阻むものは何か」をテーマに、櫻井氏のほか安倍応援団の長谷川三千子氏、産経新聞の田北真樹子氏、日本会議政策委員で憲法学者の百地章氏、杉田水脈参院議員、そして当時財務副大臣だった自民党の木原稔・衆院議員が登場した。

 木原議員といえば、百田尚樹の「沖縄の2紙を潰さなあかん」などの言論弾圧発言が飛び出し問題となった自民党の「文化芸術懇談会」代表で、2017年には“「子供たちを戦場に送るな」と主張することは偏向教育、特定のイデオロギーだ”と糾弾、自民党HP上にそうした学校や教員の情報を投稿できる“密告フォーム”の設置を実施していた人物である。

 この安倍シンパ・極右勢揃いの会のなかで、日本会議政策委員で憲法学者の百地章氏は、安倍首相による「9条加憲案」について、こう意見した。

「70年間一度もできなかった憲法改正という大事業を、私どもの力でやり遂げれば、この成功体験は必ず次につながる」
「目標としてはいずれは軍隊を持つようにしないといけないと思いながら、まず第一歩として、自衛隊を明記しよう。そこから、さらに議論をしていく中で、やっぱり自衛隊を軍隊にしなくてはいけないという形に発展する。それを私ども期待していますし、大事なことは自衛隊明記派と二項改正派の人たちが大同団結することです。これができなかったら、勝てません」
「安倍さん自身が一番、そういう苦渋の選択をされていると思います。その線で行くしか憲法改正は実現できないと思っています」

 改憲派の本音がダダ漏れの発言だが、しかし、この発言に対し、木原議員は「百地先生に踏み込んだ発言をしていただきました」と否定もせず、“私の理想は2012年の自民党改憲草案、二項を削除する改憲案”だと述べた上で、こんな話をはじめるのである。

「しかし、安倍総理が、二項を残すという決断をされました。それは、いろいろなことを慮ってのことです。選挙は勝たなければいけません。国民投票も勝たないと意味がない。改正もされない。
 もし、憲法改正は一回しかできないという法律なら、二項削除で戦うしかないと思っています。しかし、憲法改正は何回でもできる。一度、改正に成功したら、国民のハードルはグッと下がると思います。そして、一回目の改正を成功させたあとに、二回目の改正、三回目の改正と、積み重ねていけばいいと思っています。最終的には前文も当然、改正しなければいけない。そこで、一回目の改正を、しかも今年に成功させるためにはどうすればいいか。私も政治家ですから、安倍総理と同じ考えです。政治家は結果を出さなければいけません。評論家でもなく、宗教家でもないし、学者でもありません。結果を出すにはどうすればいいかということを最善の判断基準にしたいと思っています」

 ようするに、“「自衛隊明記」で改憲してしまって、その後は前文も含め、何回も改正していけばいい”“まずは改憲を成功させることが大事”だと安倍首相は考えている、と公の場で木原議員は認めたのである。

 安倍自民党はこの選挙戦でも「自衛隊明記」の改憲について「これまでの9条の解釈は変えない」と主張している。だが、この木原議員の発言をみれば、それが国民を騙すための大嘘だということがわかっていただけるだろう。

 そして、安倍首相が本当に目指す改憲とは何なのか。たとえば、安倍首相は2012年に総理に返り咲く数カ月前、こんな物騒なことを堂々と口にしていた。

「わが国の領土と領海は私たち自身が血を流してでも護り抜くという決意を示さなければなりません。そのためには尖閣諸島に日本人の誰かが住まなければならない。誰が住むか。海上保安庁にしろ自衛隊にしろ誰かが住む」
「まず日本人が命をかけなければ、若い米軍の兵士の命もかけてくれません」(「ジャパニズム」青林堂、2012年5月号での田久保忠衛・日本会議会長との対談)

 また、2002年には、早稲田大学で開かれた田原総一朗氏との対話のなかで「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」と発言(「サンデー毎日」02年6月2日号/毎日新聞出版)。第一次政権時の2006年には「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記している。

 戦争ができる国、核兵器を保持できる国へ──。安倍自民党がこの参院選で勝てば、「改憲4項目」を手始めにして、安倍首相が夢見る国をかたちづくるべく憲法改正を好き勝手に繰り返すという悪夢が、まさに現実になってゆくだろう。

 それにストップをかけるか、暴走を許すか。それが問われているのが、今回の選挙なのだ。

最終更新:2019.07.21 10:14

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