闇営業・宮迫らの「ウソ」に吉本興業は無関係なのか? 加藤浩次や近藤春菜ら芸人からも会社の責任を問う声

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日本テレビ『スッキリ』公式サイトより


 吉本興業所属の芸人らによる振り込め詐欺グループ相手の闇営業問題は、宮迫博之、田村亮、レイザーラモンHGら11名の吉本所属芸人全員が一転、金銭授受を認め、謹慎処分となったことで、さすがのテレビやスポーツ紙なども批判報道を始めた。

 しかし、批判の矛先はもっぱら、「お金をもらっていない」と嘘をついていた芸人に対してで、相変わらず、吉本興業の責任を問う声は少ない。

 言っておくが、「調査の結果、金銭授受はない」と嘘の発表をし、宮迫らを厳重注意処分で済ませたのは吉本興業なのである。いくら芸人たちが口裏を合わせても、11人もいるのだから、吉本が徹底調査をしていれば、どこかで証言に綻びや矛盾が出てきて嘘が判明したはずだ。しかも、ネットでさんざん指摘されていたように、芸人が金ももらわず、あんなサービスをするというのは考えられない。マネジメントのプロである吉本がそれを見抜けないわけがない。

 にもかかわらず、吉本が「調査の結果、金銭授受はない」としたのは、多大な損害が生じる番組降板や謹慎を避けるために、嘘を知りながら、それに乗っかったとしか思えない。

 いや、それどころか、一部では「吉本サイドが口裏合わせに関与したのではないか」という見方も流れている。

 実は、25日放送『バイキング』(フジテレビ)でコメンテーターの高橋真麻がそれを示唆するような発言をした。

 真麻はこの日、『バイキング』出演の前に火曜レギュラーを務める『スッキリ』(日本テレビ)に出演していたのだが、その『スッキリ』ではMCの加藤浩次がロンブー亮から謝罪の電話があったことを報告した。ところが、真麻は加藤がそのあと、CM中に教えてくれたエピソードを紹介しながら、こう疑問を呈したのだ。

「この番組のCM中にお話ちょっとしていたら、やっぱり、亮さんはずっと嘘をついているのが耐えられなくて、『早く言いたかった』っていうことをおっしゃっていたみたいですけれども。だから本当に、どうして一番最初のときにギャラをもらっていなかったと言ってしまったのか。で、全員が口裏合わせるのを誰が決めて、どの判断でそうしたのかっていうことまで、見ているこっちは気になっちゃう」

 また、同日の『スッキリ』では、MCの近藤春菜が涙声でコメントしたことがニュースになったが、そのなかでこんな一言を漏らしていた。

「会社自体も保身に走ったと思います」

 ほかにも、表には出てないが、芸人の間から「あそこまで全員が口裏を合わせる、というのは、事務所が関与しないと難しいだろう」という声が上がっている。

スポニチが「入江を中心に口裏合わせ」と芸人に責任おしつけ露骨な吉本擁護

 一方、こうした声が水面下で広がり始めたことで、焦った吉本は打ち消しに必死になっている。6月26日付のスポーツニッポンが、「聴取前にノーギャラの打ち合わせ、入江中心に参加芸人 届かなかったコンプライアンス強化」というタイトルで、〈問題視された闇営業の実態解明に吉本興業が取り組む中、仲介役だったカラテカの入江慎也(42)を中心に、参加した芸人間で金銭の授受に関して、事前に打ち合わせをして事情聴取に臨んでいたとみられることが25日、分かった〉などと報じたのだ。

 しかし、考えてみればすぐにわかるが、あの騒動のなかで、闇営業が報道された芸人11人全員が一堂に会するなんて不可能だし、電話やSNSでこんな人数の芸人同士が意思統一できるとも思えない。しかもスポニチは「計4度の事情聴取」でようやく口を開き始めたなどと書いているが、そもそも、吉本が追加の事情聴取を始めたのは、「注意処分」の発表が批判を浴びた後の話だ。

 しかも、記事は、一方で、〈吉本は2009年に株式を非上場にした時から反社会勢力との断絶などコンプライアンスの向上に積極的に取り組んできた〉として、今回も〈芸人仲間ら100人近くを対象に、約1カ月をかけて徹底的に調査した〉〈参加した芸人には計4度の事情聴取を敢行〉などと、吉本がいかに疑惑解明に取り組んできたかを強調しており、吉本がスポニチに書かせたのは、誰の目にも明らかだ。

「御用マスコミのスポーツ紙はどこも吉本の意を受けていますが、なかでもスポニチは露骨で、27日には入江が“闇営業ギャラをほぼ独り占め”と書いて、宮迫らを擁護する記事を書いていました」(週刊誌記者)

 しかも、スポニチ報道を受けて、26日のワイドショーは一斉に「入江を中心に口裏合わせをしていた」と大々的に報道し、吉本興業という会社の責任隠しをしている。

 まったく自分たちの初動ミスを棚に上げ、御用メディアを使って芸人や入江にすべての責任をなすりつけるとは、やり方の汚さに唖然とするが、しかし、いくら否定しても、吉本の調査が大甘だったこと、その裏には「注意処分くらいで逃げ切りたい」という意志があったことは、隠しようがない。

千原ジュニアの「契約書がない武勇伝」が証明した吉本全体の意識の低さ

 しかも、吉本の責任はもっと根本的な問題もある。そもそも、芸人がこんなにおおっぴらに「闇営業」しているのは吉本に特徴的だが、それは、吉本興業では、闇営業しなければ生きていけないくらい中堅以下の芸人のギャラが低いからだ。

 今回の事件を受けて、連合ユニオン東京の今野衛書記長はこのようにツイートしていた。

〈売れない芸人の労働相談は結構ある。吉本芸人は出演料金の90%をマネージメント料として会社に吸い上げられる。異常だよ。1ステージ1000円とか普通にある話。反社会勢力交流は駄目だけど、生活のために闇営業する芸人を俺は責められないよ。夢を食い物にする芸能産業の構造にこそ問題がある!〉

 さらにもうひとつ、吉本の問題は、会社と芸人が正式な契約を交わしていないことだ。今回、最初に入江が契約解除のニュースが流れたとき、春菜が「契約解除って、契約書交わしてませんから」と言っていたが、吉本では契約も交わしていないのに、芸人を拘束し、都合が悪くなると、一方的に解除するという奴隷労働のようなシステムがまかり通っている。

 こうした会社のコンプライアンス意識の低さが、芸人の倫理性のなさにつながっているのだ。その象徴的な会話が、25日放送『ビビット』(TBS)で展開された。

 この日、闇営業問題の再発防止について、レイ法律事務所代表の佐藤大和弁護士が「事務所とタレントの間できちんと契約書を交わすべき」「生活の問題はあるので、最低限の生活保障を事務所側は検討していくということも必要」と提言した。

 しかし、それを聞いた千原ジュニアは「それはなかなか難しいでしょうね。(芸人の)絶対数もすごいし、今後、契約書が交わされることもないと思います」と一蹴。加えて、こんなエピソードを笑い話として披露したのであった。

「契約書がないからよかったみたいなこともあって。数年前に外資が吉本興業を買い取るみたいな話になって。で、色々調べたら契約書がないってなって、外資の人間は『なぜ契約書がないのにマージンとられて彼らは働いてるんだ。彼らはクレイジーなのか』って言って、それで守られたっていう」

吉本の逃げ切り作戦、ワイドショーはきょうになって報道をぴたりと…

 ある程度「盛られた」話であり、どこまでが真実なのかは留保する必要があるとは思うが、それでも海外企業から「クレイジー」と言われたことを「武勇伝」として笑い話にしてしまうこと自体に、吉本全体を覆うコンプライアアンス意識の低さがよく表れている。

 きょう、吉本興業が発表した「コンプライアンスに関する決意表明」も同様だ。そもそも、この段階で「決意表明」って、ゆるさにびっくりだが、中身も〈二度とこのような事態が起こらないよう、改めてタレントに対するヒアリングを実施し、そこでコンプライアンスに反する関係や行動等が判明したり、疑義が生じた場合には徹底的に明らかにしたうえで速やかに対処いたします〉などと、芸人個人へのさらなる責任押し付けを叫んでいるだけで、タレントとの契約書締結や最低生活保障などについては、一切ふれていなかった。

 そして、こうした吉本興業の姿勢を後押ししているのが御用マスコミ、とくに吉本興業の株主でもあるテレビ各局だ。実際、昨日まではあれだけ闇営業問題を大々的に報道していたワイドショーの多くはきょうになって、気持ち悪いくらいに報道をぴたりとやめてしまった。やったとしても、せいぜい入江だけを責めるようなものだった。(スリムクラブの速報が入ってからはやっていたが)

 おそらく吉本と御用マスコミはこの期に及んでもなお、具体的な責任も対応策もとることなく、表面的な謝罪で乗り切れると踏んでいるのだろう。

 しかし、きょうも、スリムクラブの暴力団関連のイベントへの闇営業が明らかになり、吉本興業から無期限謹慎処分が発表された。これも当初、吉本の自主的な聞き取り調査によって判明したかのように報じられていたが、実際は明日発売の「フライデー」のスクープによって発覚したものだ。吉本興業が姿勢を改めないかぎり、同種の問題はこれからも続発するだろう。

最終更新:2019.06.27 11:43

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