ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第6号 

ブラックすぎるパチンコ店! 日常的にグーで殴られ、カウンター業務の最中にセクハラ…あげく突然の理不尽解雇

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 弁護士という職業の面白いところは、自分一人の人生だけでは体験できない、様々な人生を追体験できるところにあると感じる。私自身、労働事件を担当する中で、いろいろな人生勉強をさせてもらった。今回は、中でもとりわけ衝撃を受けた事件について紹介しようと思う。

 私は、月に2回、神奈川県内のとある地域の労働組合の事務所にて、法律相談を担当している。ある日、組合事務所のもとに、パチンコ店のホールで働いていたという一人の若い女性が相談に訪れた。相談の用件について聞くと、勤めていたパチンコ店から解雇されてしまったという。会社との間でどのような契約が結ばれているかを確認しようとするも、契約書の類は見たことがないし、もらった覚えもないとのこと。これでも明確な労働基準法違反であり、ひどい話なのであるが、年間50件ほどブラック企業を相手にする裁判を担当している私の目から見れば、残念ながら「よくある話」である。

 しかし、もちろん、話はそれだけではない。彼女によれば、店長が1年程前にとある男性(A店長としておこう)に変わってからというもの、様々な嫌がらせを受けてきたという。

 まず、日常的な暴力。特に理由があるわけでもないのに、彼女はA店長から日常的にサンドバッグにされてきたという。それも、ただのパンチではなく、その筋の方々がやっているように、人差し指と中指で親指を包み込むように拳を握り、人差し指と中指を少し浮かせた状態で殴ることで、殴られたときの衝撃を倍加させるやり方で彼女を殴るのである。路上で行われているケンカではない。職場で彼女が日常的に受けていた暴力である。

 お客さんたちが多数いる前で、突然自分の革靴を脱いで投げつけてきたということもあった。新日本プ〇レスが好きなのだろうか? 特に理由もなく殴るため、防御のしようもない。ひどい話である。相談に訪れた少し前に骨盤を殴られたことで、彼女は腰痛が収まらないとこぼしていた。

日常的な暴力に加え、いじめ、セクハラまで!カウンター業務の最中に無理やり…

 次に、いじめ。A店長は、彼女が仕事で失敗するよう、様々な仕掛けを施していた。例えば、彼女が景品カウンター業務の担当をしていた時のこと。彼女は手にしていた雑巾を店内奥の棚にしまおうと思い、一瞬だけカウンター業務を同僚に代わってもらったということがあった。彼女が雑巾をしまってカウンターに戻ってくると、なぜか3万円相当の景品が紛失していた。お客さんが全く来ていないにもかかわらず、である。同僚に聞いても、A店長を除き、誰もカウンターには来ていないという。

 泥棒に入られてしまったのではないかと考え、彼女はひとまずA店長に報告し、謝罪をした。A店長は「いつ気づいたのか?」と彼女に問いかけた。彼女は、「雑巾をしまって、カウンターに戻ってきたときです」と答えた。すると、A店長はニヤリと笑い、「お前がカウンターにいなかったから、俺が取ってやったんだ!」と衝撃の告白。正直に申告してしまう意味が今一つ分からないが……。他にも、希望するシフトに入れてもらえず、仕事を干されていくという嫌がらせにもあっていた。

 最後はもちろん(?)、セクハラである。A店長は、彼女がカウンター業務に就いている最中に突然、彼女の制服の間に手を滑り込ませて胸を触ってきたり、彼女の手を取って無理やり自分の性器を触らせようとしてくるということが何度もあった。もちろん、白昼の店内で堂々と、である。

 自分は店長から嫌われていると思っているが、なぜセクハラのターゲットにされたのかは未だに分からないと述べていた。私は彼女の話を聞きながら、一番好きな子に優しくできないという、小学生男子特有の癖を思い起こしていた。しかし、職場は小学校ではない。職場の上司が部下に対しセクハラをするなどということは、断じて許されない。

 しかし、本当の衝撃は、ここからである。

 彼女は、A店長からシフトを減らされたことについて、専務に相談しに行った。専務の方は、適切に対処していただけたようで、A店長に対し、彼女のシフトを元通りにするよう注意した。これを受け、A店長から彼女に交付されたシフト表は、元のシフトに戻されていた。

 ところが、「その代わりに……」と言ってA店長が彼女に手渡したのは、解雇予告通知書であった。

シフト変更を申し出たら解雇、解雇理由は“パチプロ並みの技術がないから”!?

 その中には、数十項目にもわたる解雇理由が長々と書かれていた。中には、全く心当たりのない事実も書かれていた。これでは自分が解雇された理由が良く分からないと考えた彼女は、A店長に対し、最も重視された解雇理由は何なのかと尋ねた。

 これに対し、A店長は、「目押し(筆者注:回転するリールの特定の絵柄を有効ラインに狙い撃ちすること)が出来ないことだ」と、冷たく言い放った。

 私は衝撃を受けた。パチプロよろしく、スロットの目押しができないことには、パチンコ店のホール業務やカウンターでの景品交換業務もままならないのか……と。この話を聞きながら、私は昔、当時大いに流行していたポケ〇ンの中で出てくるスロットの目をうまく合わせられず、ゲーム友達から馬鹿にされ、対戦に入れてもらえなくなってしまったという悲しい記憶を思い起こしていた。このパチンコ店は、本当は小学校なのではないかと訝しみ、私も現場を確認したが、小学校などではなく、きちんとした(?)パチンコ店であった。寒風吹きすさぶ中、パチンコ店のきらびやかな照明を見つめながら、私は、ブラック企業に勤めながら給料をもらって生活するというのは、かくも大変なことなのだと実感し、身が震える思いを味わった。

 私は、パチプロの技術がなければパチンコ店で働いてはダメだという理屈はさすがにおかしい上、彼女がA店長から受けてきた被害の数々は救済されるべきだと思い、裁判所に労働審判を申し立てた。申立てをした1週間後、専務はA店長を伴って私の事務所に急ぎ駆けつけ、話し合いによる解決を求めてきた。

 何度か協議が行われたが、会社としては、この種の事件としては異例の水準の金額を支払って事を収めたいとのことであった。そうであれば彼女も納得するということで、本件は労働審判期日前に異例のスピード解決を見ることとなった(会社は解雇を撤回し、会社都合にて円満退職をする代わりに、解決金を支払うという内容で和解)。

 本件は裁判外で和解にて終了したため、会社名を公表することはできないが、今も存在する会社である。本件をきっかけに、会社が管理職を適切に管理する体制を作ってくれればと強く願う次第である。

【関連条文】
労働契約明示義務 労働基準法15条1項
解雇 労働契約法16条
セクハラ 男女雇用機会均等法11条
殴る 刑法204条

(笠置裕亮/横浜法律事務所https://yokohamalawoffice.com

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■ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

最終更新:2018.07.03 11:07

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