「みんな死ね!」と思っていた20代の前半。俳優・山田孝之が病んでいた暗黒の日々を明かす!

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カメレオン俳優・山田孝之の闇とは?(『21世紀深夜ドラマ読本』洋泉社)

『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京)、『荒川アンダー ザ ブリッジ』(毎日放送)といったカルト的な人気を誇るドラマ作品に出る一方で、ジョージアやプレイステーションなど、大企業のCMにも登場する山田孝之。

『闇金ウシジマくん』(毎日放送)のようなコワモテ役から、映画『鴨川ホルモー』のコメディタッチの役まで、どんな仕事の依頼が来てもこなすことのできる“憑依型”の俳優である彼が、いかにしてそのような役者になることができたのか、そこに至るまでの葛藤を『21世紀深夜ドラマ読本』(洋泉社)掲載の吉田豪によるインタビューで語っている。

 まだ現在のような評価を得る前、20代前半から半ばにかけての時期に、彼は『WATER BOYS』(フジテレビ)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS)といったドラマに出演し、注目の若手俳優として活躍していた。

 だが、アイドル的な人気を得て順風満帆に見えた彼の心は“病んで”いた。

 その頃、彼が心酔していたのは、90年代のグランジムーヴメントを代表するアメリカのバンド、ニルヴァーナ。1994年に自殺したカート・コバーンを中心とし、鬱屈した思いを抱える少年少女からカリスマ的人気を得た彼らの音楽や詞は、“病”“うつ”“死”を連想させる暗いものだ。

 その時期の山田は、「ただ単に人がイヤになったりすると、みんな死ねと。でも、みんな死なないから僕が死ぬかなぐらいの感じでしたね」と言うぐらい荒んでいた。

 そして、その時期の山田はカート・コバーンの残した言葉に大いに共感する。

「なんの本か忘れましたが、ライブでステージに立つときに、出る瞬間タイムカードを押している気持ちになると。それはすごく僕も共感できて、「今本当にそんな感じだ、なんで俺こんなことやってるんだ」と思いながら仕事していて」

 出る作品はどれもヒットし、人気もあったが、事務所がもってきた仕事をただこなす日々に山田孝之は虚しさを感じていた。

 現在では、「そこからいろいろと仕事の状態が変わってきて、面白いことに参加させてもらえるようになって、自分から動けるようになって、それが形になってきて、徐々に変わってきて、今はすごい楽しめるようになっていますね」と語るまでに“病んだ”時期を乗り越えた彼だが、そのターニングポイントは、2007年に三池崇史監督の映画『クローズZERO』に出演したことだった。

「Quick Japan」(太田出版)10年10月号では、『クローズZERO』が初めて自分で出演を選ぶことのできた作品だと語っている。

「昔は「はい次コレ」って台本を渡されて、「はいわかりました」ってやってたんですよ」
「『白夜行』(TBS)みたいに今でも大好きな作品に出ることができましたけどいつでも自由に作品を選べるわけじゃなくて」
「たまたま組織変更もあって。で、初めて自分で選んだ作品が『クローズZERO』だったんです。以前の体制だったらたぶんやらせてもらえなかった」
「17歳の頃から、「不良の役をやってみたい」って訴えてたんですよ。「役者としてステップアップするためには、いろいろな役で、いろいろな作品に出ることが必要だからやりたいっす」と言っても、なんだかんだでやれなかった。『クローズZERO』でようやくチャンスが回ってきて、これは賭けだなと。ここでぶちかませば、絶対に仕事の幅が広がるな、と」

 山田孝之が、この賭けに勝ったのはご存知の通り。そして、ここからは自分の役は自分で選ぶことができるようになった。

 かつて、「ライブでステージに立つときに、出る瞬間タイムカードを押している気持ちになる」というカート・コバーンの言葉に共感していた彼はもういない。

「Cut」(ロッキング・オン)11年1月号でも、「芝居することは昔から楽しかったんですけど、今は、次これやりたいっていうのを自分でチョイスできるから、その分もっと楽しめてますよね。「次これ」って会社に言われるのと、「よし、次これやろう!」って自分から言うのは、ぜんぜんやる気が違うじゃないですか」と、自分の活動に裁量権を与えられた充実感を語っている。

 そして、この時期から彼に仕事を選ぶ権利が与えられたことが、どんな役でもこなしてしまう、今の“憑依型”俳優としての山田孝之をつくることになる。

 前述の『21世紀深夜ドラマ読本』では、こう語る。

「仕事もそれこそ前後1年でバランスを見て選ぶので、似たような作品がなるべく続かないようにしたりとか」
「まず飽きるのもそうだし、自分が飽きるということは観る側も絶対飽きると思いますし。映画でも300館で公開するデカイのもあれば小さいのもあるじゃないですか。それは館数で選んでいるといいうよりは、わかりやすく大勢の人が観て喜ぶような作品をやったあとってそういうのを求めなかったりするので、次はかぎられたところでもいいから、もっと心にバスッと響くようなやつをやりたくなって」

「役者の仕事は、イメージがついたら終わり」。この考えが、『クローズZERO』以降の、演じる役の幅が広すぎる役者人生を歩むうえでの根幹となっている。

 そして、最近の山田孝之は、“役者としてステップアップするためにいろいろな役に挑戦したい”という役者としての本能に忠実に生きるだけでなく、プロデューサー的な仕事にも関わるようになった。

 そんな彼のプロデュース業の本格的な第一歩が『REPLAY&DESTROY』(TBS)。この作品では、出演だけでなく、キャスティングプロデューサー的な立場としても動いている。共演者に出演オファーの連絡を入れたのも彼で、オーディションの立ち会いや様々な会議にも顔を出している。

 そういった動きもあるので、この作品には、“企画 飯塚健+山田孝之”としてスタッフクレジットにも彼の名が載っているのだが、これには「今回は別に大したことはやってないですけど企画としてちゃんと名前を入れさせてもらって。こういうことをやりだしました、今もっと勉強したいです、だから誰か一緒に組んでやりましょうよというアピールでもありますね」という意図があるようだ。

 山田孝之と共演回数も多い小栗旬も、表舞台に立つ役者でありながら、映画『HK 変態仮面』で脚本協力を務めるなど、“陰のプロデューサー”として裏方の働きをする人物として知られている。山田孝之も『REPLAY&DESTROY』を契機に小栗のような存在になっていくのだろう。

 かつて山田孝之が心酔していたカート・コバーンは、遺書に「徐々に色あせていくなら、いっそ燃え尽きた方がいい」と書き残して自殺した。だが、山田孝之には「徐々に色あせていく」日も、「燃え尽きる」日も、やって来ることはなさそうだ。
(新田 樹)

最終更新:2015.06.23 08:29

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